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第57話 壊すなら、貴方の手で20(R18)

 浴室に行くと、露天風呂の素晴らしさに黒兎は声を上げた。  内浴室にはシャワーと小さな石造りの浴槽があり、ガラス窓の向こうは同じく石造りの大きめの浴槽がある。石と生け垣でそれとなく目隠しも造られていて、ライトで照らされた生け垣の外は、やはり景色はあまり見えなかったけれど、雰囲気は充分だ。 「気に入ってもらえたようでなにより」  脱衣所で黒兎の様子を見ていた雅樹が、そんなことを言う。しかしそんな彼の表情を見て、黒兎はドキリとした。雅樹は既に熱を帯びた視線で黒兎を見ていたからだ。 「えと……雅樹?」 「ああすまない……」  頬を撫でて唇を寄せてくる雅樹。やはり待てないらしく、そのまま口付けが始まってしまった。 「まさ……んん……」  今度は遠慮なく性感を高めてくる彼に、黒兎は先程お預けにされた熱が一気に戻ってくる。深いキスで意識を溶かされ、雅樹の舌が黒兎の感じる所を掠める度に、足から力が抜けそうになった。 「脱いで……」  少し息が上がった雅樹の声が色っぽくて、黒兎は素直に従う。お互い服を脱いだら、黒兎は手を引かれて浴室に入った。  お互いに軽くシャワーで身体を流し、髪も濡らして頭を洗い合う。 「やっぱり、黒兎の手は気持ちがいいね」 「……そう?」  ああ、と返事をする雅樹は、大きな手で黒兎の頭皮をマッサージをしてくれる。その間も、熱を隠そうとしない視線で見つめてくるから、黒兎の熱も上がった。 「雅樹の手も……気持ちいいよ」 「それはよかった」  そう言って唇を啄んでくる雅樹。頭にあった手が後頭部に回り、うなじ辺りを指先でくすぐられる。ひく、と肩を震わせると、じわりと腰の辺りが更に熱くなった。すると、黒兎の反応でスイッチが入ったのか、雅樹はキスを繰り返しながら、泡がついた手で背中や腰を撫で、黒兎は堪らず唇を離す。 「……っ、んんっ」 「黒兎、気持ちいいかい?」  泡が滑りをよくして、普通に撫でられるのとはまた違う感覚に、黒兎は悶えた。それでも雅樹はしつこく唇に吸い付きながら、黒兎の胸を撫でる。 「あ……っ」  唇を吸われながらも声を上げると、自分でも思ってもみない程、高く上擦っていた。すると雅樹は口の端を上げ、二人の頭を流す。 「身体を洗ってあげよう黒兎」  そう言って雅樹は改めてボディソープを手に取る。手に溢れんばかりの泡を持って、黒兎に塗り付けるのだ。ヌルヌルした手が身体を這う感覚に、黒兎は肩を震わせ、甘く湿った吐息を吐き出す。  雅樹がクスクスと笑った。 「本当にきみは……」 「な、なに……?」  雅樹はなぜか黒兎の身体を反転させ、後ろから抱きつく形にする。どうして、と思ったら、目の前に全身が映る鏡があったのだ。雅樹との行為に夢中になって、気付かなかったことに恥ずかしくなる。 「自分がどんな顔をしているか、見てごらん」 「……っ」  黒兎は視線を逸らして首を振る。細くて貧弱な身体を見るのも萎えるのに、感じている自分の顔を見るなんて、恥ずかしすぎる。  それよりも背中や尻に当たる、雅樹の胸板や熱くて硬いものに意識がいってしまい、それだけで視界が霞むほど興奮した。 「こら、まだ腰を動かすのは早いよ?」  笑いを含んだ声で咎められ、両方の胸の突起を擦り上げられる。ビクビクと背中が震え、短く呻くと自然と弓なりに背中が反り、尻を突き出すような格好になってしまった。  耐えられず鏡に手を付き、雅樹から与えられる刺激を素直に受け入れていると、耳を舐められて声を上げる。 「あ……っ、やっ、耳も一緒は……!」 「どうして? 気持ちいいでしょう?」  雅樹の吐息が熱い。ヌルヌルと雅樹の胸板で背中を撫でられたり、下半身の際どい所を泡で撫でられる。そして再び胸に彼の手が戻って来た時には、声を我慢することができなくなっていた。 「やだ……っ、やだっ、乳首ジンジンしてきたからっ」 「してきたから? もっと触って欲しい?」  下は触らなくていいのかい? その雅樹の言葉をきっかけに、黒兎の太腿が震え出す。黒兎は拳を握り、何かがせり上がってくる感覚に天を仰いだ。 「──だめイク……っ、あっ! ああっ!」  足腰をガクガクと震わせ、音も視界も思考も一瞬にして真っ白になる。身体を貫いたかと思う程の快感に、黒兎は悶えた。 「イッたのかな?」  嬉しそうな雅樹の声がする。その声にもぞくりとして肩を震わせると、雅樹はシャワーで黒兎に付いた泡を洗い流した。そのまま雅樹に手を引かれ露天風呂に行くと、彼は何食わぬ顔で浴槽に入っていくのだ。  外はさすがに寒くて、お湯に浸からないと凍えそうだと、黒兎も後を付いていく。 「黒兎、おいで」  雅樹は浴槽の中の段差に腰掛け、膝の上に黒兎を引き寄せた。やはり雅樹はこのまま終わらせるつもりはないらしく、黒兎もホッとして大人しく彼の膝に向き合って座る。 「雅樹……」  黒兎は自ら雅樹の肩に腕を回し、唇を吸い上げた。雅樹もそれを優しく受け止め、口付けを返してくれる。  雅樹が笑った。 「黒兎、キスだけでいいのかい?」 「ん……っ!」  不意に胸の敏感な所に触れられて、黒兎の腰が跳ねる。その弾みで離れた雅樹の唇が、黒兎の顎から首筋へと這っていった。生温かいそれは不思議なことに、確かな痺れを残して下がっていく。黒兎は顔を顰め肩を竦めると、また覚えのある感覚が迫ってきた。 「ま、雅樹……っ」 「またイキそうかい? いいよ、黒兎がイクところ、何度でも見たい」  そう言って胸まで下がった唇が、黒兎の硬くなった胸の先に吸い付いた。温かい舌が這い、程よい力で吸われ、歯が優しく当たる。気持ちがいい。気持ちがよくておかしくなりそうだ。 「……め、雅樹っ。またイク……っ、イッちゃうから……っ!」  そう叫んだ直後、高く悲鳴を上げて黒兎は背中を大きく逸らす。性器に触れられてもいないのに、と羞恥心で更に興奮し、堪らず黒兎は限界だった怒張から精液を吐き出してしまった。 「……ああ、こっちもイッてしまったのか……」  黒兎の様子に気付いた雅樹が、お湯の中を覗き込んでいる。本当に触れられずに射精してしまうなんて、と涙目になっていると、そんなに気持ちよかったのかな? と雅樹は上機嫌に聞いてきた。 「ん……」  二度の絶頂で頭がふわふわする。黒兎はお湯を抜き始めた雅樹の動きをボーッと見つめていた。 「さすがにここだとのぼせたり、凍えたりしそうだからね」  移動しよう、と雅樹は黒兎の手を取る。まだまだこれからだよ、と彼は綺麗な顔で笑った。

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