67 / 107

第67話

「……という訳で、もう元の世界には帰れないんだわ」 そう言ってニヤリと笑うと、シルヴァの綺麗なサファイアの瞳から涙が滝のように流れ出し 「もう……二度と会えなんだと、そう思っていました」 と言いながら、俺の身体をゆっくりと抱き締めた。俺はシルヴァの背中に腕を回し 「お前な、なんでも勝手に一人で決めるの良く無いよ!」 そう言って背中を軽くポンポンと叩いた。 シルヴァは泣きながら俺を抱き締めて 「一度だって、忘れた事の無い多朗の匂いと温もりだ……」 俺の首元に鼻先を着けて、クンクンと鼻を鳴らして匂いを嗅いでいる姿は、まるでゴールデンレトリバーみたいだ。 「シルヴァ……くすぐったい!」 「多朗……多朗……」 まるでうわ言のように俺の名前を呼びながら抱き締めているシルヴァの下半身が、ゴリッと硬くなって俺の腹に当たった。 「…………おい、シルヴァ」 思わず固まると、シルヴァの唇が首すじに吸い付いて、俺の双丘を鷲掴みして来やがった。 「待て待て待て!!」 慌ててシルヴァの顔を引き剥がし 「俺さ、まだ勝手に記憶消された事とか、俺の意志を無視して元の世界に戻された事。怒ってるんだよね」 そう言って拳を作ると、シルヴァに見せた。 「これで許してやるから、二、三発殴らせろ!」 俺の言葉に、シルヴァがしょんぼりした顔をした後 「それで多朗の気が済むなら……」 と呟いて、ゆっくりと目を閉じた。 痩せこけたけど、睫毛の長さは変わらねぇなぁ~って考えながら、まるでキス待ちしているような顔で殴られるのを待っているシルヴァに 「シルヴァ!歯ぁ、食いしばれ!」 そう叫んで拳を振り上げた。 身動ぎもせずに待っているシルヴァの胸ぐらを掴むと、俺はシルヴァの唇に唇を重ねた。 驚いて目を見開いたシルヴァに 「口……開けよ……」 そう唇を重ねたまま呟き、舌を絡めて互いを求め合う甘いキスを交わす。 角度を変えて貪るように舌を絡め取られ、舌も唾液も……吐息さえも奪う激しいキスを交わす。 すると、不思議な事にシルヴァの身体がゆっくりと元に戻って行く。 (あぁ……そういやぁ、俺って治癒の能力あるんだったな) ぼんやりとそんな事を思い出して、そっと唇を離すと 「よぉ!久し振りだな、キラキラ王子」 身なりはボロボロでも、肌艶や体躯は元通りに戻っている。 シルヴァが驚いた顔で自分の身体を確認すると 「多朗……。怪我が治せるのは知っていましたが、いつの間にこんな能力を?」 と、目を見開いて聞いて来た。 「さぁ?こっちに帰って来てから、いろんな能力が開花しちゃってさ」 そう言って肩を窄めて笑う俺に、シルヴァは俺を強く抱き締めると、なにやら不思議そうな顔をして 「多朗……だよな?」 ってマジマジと見つめている。 「あぁ。あっちの世界で二年が経過してるから、シルヴァと別れた頃からは二歳年を取ってるんだよ」 そう答えて 「迎えに来るの、遅くなってごめん」 と呟いた俺を再び強く抱き締めると、シルヴァが押し倒してキスをして来た。 「待て!待て!早まるな!」 ジタバタと暴れる俺に 「二歳も年を重ねた多朗を、この目にする事が出来るなんて!」 そう言うと、俺の衣類をひん剥こうとしている。 「止めろ!シルヴァ!お前はバカか!」 「なんで?久し振りに会った恋人がする事は、一つだよね!」 「時と場所を考えろ!」 そう叫んだ時だった。

ともだちにシェアしよう!