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第84話 4つの宝石と三匹の竜

睨むシルヴァに俺はコクコクと頷いて 「だから、今から俺に付き合って欲しいんだよ」 そう言って、俺は洋服に着替えてシルヴァを外へと連れ出した。 するとサシャが既に水竜の居る池で30㎝大の円形の宝石を並べていた。 「サシャ、悪い。待たせたな」 と声を掛けると、サシャは笑顔で俺達を迎えて 「恩人多朗に頼まれたからな!特別な石を持って来たぞ」 そう言ってルビー、サファイア、エメラルド、トパーズの球体の石を並べてある場所へ連れて来た。 俺はサファイアの石を手にして 「ディラン……ディラン、聞こえるか?」 目を閉じて念を込めて水の神様のディランを呼ぶ。 すると湖の真ん中に小さな渦ができて、段々と大きくなって行く。 そして湖が渦で覆われると、真ん中から青い龍が現れた。 『呼んだか?勇者多朗』 突然現れたデカイ龍に、サシャが腰を抜かしている。 「ディラン、君たちを助けてに来たよ」 そう言うと、俺はディランにサファイアの球体を渡す。 『多朗、これは?』 「人間を依代にしなくても、これを依代に出来るんじゃ無いかなって」 そう言うと、水の神のディランは意味を理解したらしく小さく笑った。 『なるほど』 「それはお前に預ける。その湖の底で守るのでも良いし、この社で人間に守らせるのでも良い」 俺の言葉に、ディランは大切に抱えて 『いや、これは湖の底で私が守ろう』 と答えた。 「そしてもう一つ」 俺はそう言って、ルビーの球体をシルヴァに手渡した。 「シルヴァ。この中にエイダンを入れるイメージをして、エネルギーを込めてくれないか?」 と伝えると、シルヴァは俺の意図を理解してくれたようで、黙って頷くとルビーの球体に手を翳して目を閉じた。 するとシルヴァの手から赤い光が発せられ、ルビーの球体の中に小さな煙のような物がグルグルと渦を巻き始めた。 そして真っ赤な閃光がルビーの中から発した時、シルヴァの身体がぐらりと揺れた。 俺は慌ててシルヴァの身体を抱き留めると 「ごめん、無理させて」 そう呟くと、シルヴァは小さく微笑み 「この後、たっぷりエネルギーをいただくから覚悟してろよ」 って呟いた。 俺が苦笑いしてその球体をディランに渡すと、ルビーの中から再び閃光が光って赤い龍が現れた。 ゆっくりと二体の竜が、幸せそうに絡み合う姿が見えてシルヴァと微笑み合う。 「成程、依代を人間の身体の中から、宝石に変えたわけか」 そう呟くシルヴァに頷いて口を開こうとすると、腰を抜かしていたサシャが 「た……多朗?一体、何が起こってるんだ?」 そう叫んだ。

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