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第88話 いざ!マテオ救出
俺がそっと目を開くと、サシャが木の切り株に座って俺を不思議そうな顔で見ている。
「さっきの竜もびっくりしたけど、今、お前の身体の周りに緑色の竜みたいな煙がクルクル渦巻いたかと思ったら、お前の腹ん中に入って行きやがった」
サシャの感想に、俺は苦笑いを返して
「さて、シルヴァが回復したら、マテオを奪還しに行くとするか!」
そう言って右手の平に左手の拳を当てて自分に気合いを入れる。
俺の声に答えるように、風が俺の身体を包み湖の水面に渦が現れた。
中からディランが現れ
『多朗、マテオを頼んだ』
と言うと、俺の指輪にディランの人差し指で触れて魔力を込めた。
『何かあっても、その指輪と我のエネルギーが通じておる。お前を助けに何処へでもひとっ飛びで助けに行ける。心置きなく戦って来い』
そう言うと、俺の腹に顔を近付け
『マシュー、多朗を頼むぞ』
と声を掛けた。
すると俺の腹の中から緑の煙が現れて、竜の形になる。
『任せろ!ディラン。ママの身体は、僕が必ず守る』
『それは頼もしい』
と会話をしている。
そんな光景を見ながら、サシャが
「多朗。俺はお前が人間に見えなくなりそうだよ」
って呟いた。
俺が苦笑いを返すと、シルヴァが戦いの準備をして現れた。
西洋甲冑を身に纏ったシルヴァの姿は、思わず惚れ直す位にカッコイイ。
「エイダン!」
シルヴァがそう呼ぶと、目の前に炎が現れて竜の形になった。
『シルヴァ、呼んだか?』
「エイダン、マテオを救いに行く。力を貸せ」
『相変わらず偉そうだな、お前は』
「お前にだけは言われくないけどな」
そう言ってエイダンはシルヴァの指輪に人差し指を指すと、シルヴァのルビーの指輪が赤く光る。
「さぁ、多朗。行こうか!」
赤いマントを翻し、シルヴァが振り向いて手を差し出す。
ゴールドの西洋甲冑に赤いマント。
そして後に一つに束ねたシルヴァの長い髪の毛が揺れて、キラキラと輝いている。
(ヤバイ、シルヴァがめちゃくちゃカッコイイ!)
うっとりと見惚れていると、サシャが咳払いして
「見惚れてるんじゃね~よ!」
って呟いた。
「サシャ!シー!!!」
と、口元に人差し指を当てて小声で叫ぶと
「え?多朗、見惚れてくれたのか?」
シルヴァがキラッキラした目で俺に近付く。
(折角、カッコ良かったのに……)
いつものシルヴァになってしまったのにガッカリして溜め息を吐くと
「えぇ!なんで溜め息?」
ってシルヴァが叫ぶ。
「お前、喋るな!」
「多朗!それは酷い!」
そう言い争っていると、遠くから号砲が聞こえた。
「おっと、おあつらえ向きに敵さんもいらっしゃたようだな」
俺が呟くと、シルヴァも真顔になって遠くの空を見上げた。
「ディラン、エイダン。此処にいるみんなを頼んだぞ」
シルヴァがそう言うと、二匹の竜が
『やれやれ、我らの主人 は竜神使いが荒い』
と言うと、俺達に微笑み
『此処は任せろ!その代わり、お前たちは必ずマテオを救い出して来い』
そう言って一声大きな声で『ゴォー!』と鳴き声を上げた。
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