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第84話 結局ふたりはこんな感じ【終】
「今日は、大丈夫だよ!」
俺は意を決してソファーの上にごろんと転がり、目をギュッと瞑った。
すると鼻で笑われたような気配があった。
「どこが」
十夜は瞼の上に優しく口づけをしてくる。
鼻筋や頬にチュッチュッと柔らかくキスを落として、首筋に手を這わせようとした時──
ピコン
ピコン
ピコン
ピコン
十夜のポケットからLINEのメール着信音が止まらなくなった。
途中まで無視していたが、あまりにも鳴り続くので一旦中断し、十夜は面倒そうにスマホを取り出した。
ちょうど電話がかかって来たので、俺の目の前で電話に出た。
『おーい、十夜ぁ、もしかして優太くんと一緒にいる~? これから俺んちでゾンビ映画観ようよ! 新はもう来てるよー!』
なんとも空気が読めないのは今に始まったことではないが、賢人くんの無邪気さに十夜と顔を見合わせて吹き出してしまった。
エロモードはすっかり消えてしまった俺たちは、賢人くんの家へ行くために支度をした。
さっきコンビニで買った物も持って部屋を出る。
「うー、ちょっと寒い」
冷たい風が全身を包んだ。
日中はあんなに過ごしやすかったのに夜は冷える。
ブルッと身震いすると、すかさず十夜の手が俺の手の平に伸びてきた。
やっぱり十夜の手は大きくて温かくて安心するから、大好きだ。
「俺は早く優太さんの可愛いところが見たいからね」
意味深に笑われたので、俺は唇を横に引きながらコクコクと頷いた。
今日もエッチはないと思うと、正直安堵している自分がいる。けれどさすがに待たせすぎているというのは自覚しているから、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
あ、そうか。
十夜と2人きりだから、心臓が持たないのかも。
「賢人くんの家で、する?」
唐突な提案にぶっと吹き出した十夜は、ネタなのか本気なのか「あぁ?」とメンチを切ってきた。
「なーんで空気読めなさすぎお調子者男と、愛想悪すぎ上から目線男の前でエロ行為をしなきゃなんねぇんだよ」
「だってそうでもしないと一生できない気がしてっ」
「馬鹿野郎!」
頭にチョップを落とされて、ケラケラと笑いあった。
俺はこの何気ない幸せな日常が、できるだけ長く続いていきますようにと願いながら、十夜の腕にピタリとくっついた。
☆END☆
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