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【スピンオフ】ワケあり医者は狼青年を大事にしたい/6 それからの狼と医者・終

「先生、タンポポ茶が入りま……」  すり鉢の音がしなくなったから、そろそろ休憩の時間だと思ってタンポポ茶の用意をした。干しリンゴを入れたパンケーキも並べたし、先生を呼ぼうと思って振り返ったら、……キスをされた。 「ん……、んーっ、ん、んっ」  しかも、とても長いキスだ。昼間からこんなことをしてと先生の胸を叩いたけど、僕よりずっと逞しい先生はびくともしない。そのうち口の中を舐め回していた先生の舌が僕のものに絡まって、根元からジュルッとすすったりするから、お腹の奥がきゅんとしてしまった。 「せ、んせぃ……!」  息継ぎのときに顔を逸らせて、ようやく逃げられた。 「先生ってば、まだ昼ですよ……!」 「おっ、じゃあ夜ならいいってことか」 「先生!」  もうっ、またそんなこと言って!  最近の先生は、前よりいやらしくなった気がする。朝でも昼でも、僕がちょっと油断するとすぐにキスをしてくる。それだけならまだしも、上着の中に手を入れてきたり、なんならズボンの上から性器を撫でたりもするんだ。  そんなことをされると、気持ちがよくて大変なことになってしまう。それに、お尻からトロッとしたものが流れて、下着を汚してしまうことだってあるんだ。だから駄目だって言っているのに、先生はちっとも聞いてくれない。 「お、パンケーキか。…………うん、うまい!」 「あ、りがとう、ございます」  さっきまでいやらしいキスをしていたのに、気がついたらパンケーキを頬張っている。満面の笑みで食べている先生はまるで子どもみたいだな、なんて思う僕は変なんだろうか。  …………だって、こういう子どもみたいなところは僕しか知らないのかなって思ったら、ね。  パンケーキに混ぜている干しリンゴは、先生の知り合いからいただいたものだ。この前の診察のお礼だといって、昨日届いた。僕がずっと食べているリンゴジャムも同じ人が作ったものだと聞いた。だからか、僕好みの甘さと酸味に固さで、つい食べすぎてしまう。  そしてジャムも干したものも、特別に祝福されたリンゴを使っているのだと教えてもらった。 (僕と先生が繋がるための、特別なリンゴ……)  苦もなく交われるようになってからも、祝福のリンゴはずっと食べ続けている。もちろんこのリンゴが好きだからということもあるけど、それだけじゃない。このリンゴを食べると、すごくいやらしい気持ちになれるからって理由が大きかった。  それは発情と呼ばれる現象で、そうなるとすごく先生がほしくなる。そんなふうに変わる僕を、先生はとてもうれしそうに見てくれる。いやらしく喜んでくれる先生に、僕は交わりたくてたまらなくなる。 (同じリンゴを食べてるけど、先生はどうなんだろう)  狼と人のつがいは、祝福のリンゴを食べるとお互いに発情する。そうして種の壁を超えて交われると学んだ。 (じゃあ、半分狼の先生は?)  僕みたいに発情して、……いるのかな? いつだっていやらしいことを言うし、いやらしいこともしてくるから、よくわからない。ということは、先生にはリンゴの影響はないってこと……?  気になる。つがいとしても気になるけど、先生の弟子としても、どういう現象が起きているのかとても気になった。先生は特別な存在だから、僕たち狼とも人とも違うのかもしれない。  僕が先生のところに来て一年くらい経ったとき、先生から「俺はなぁ、半分狼なんだ」と教えてもらった。その証拠が獣の目で、つい最近、子種が出るときの性器に(コブ)ができることも教わった。  話を聞いたとき、そんなことがあるわけないと思った。だって(コブ)は獣の狼の特徴だから、いくら半分狼でも出るわけがないと思ったんだ。僕たち狼だって、人型だから(コブ)なんて出ない。  だけど、先生の性器にはちゃんと(コブ)があった。直接見て触って確認させられたから間違いない。  そんな先生が祝福のリンゴを食べ続けたら、どうなってしまうんだろう。 「どうした? おっ、もしかしてヤラシイ気持ちにでもなったか?」 「先生ってば……」 「おっと、これ以上は叱られちまうなぁ」  薄く生えた顎ヒゲを撫でながら先生が笑う。まったくもう、先生はいつだってこうだ。ふざけているかと思えば真剣で、真面目な話かと思えばいやらしいことを口にする。 (そんな先生だから、余計に惹かれるんだけど)  優しくしてくれるのがうれしくて、どんな人か気になった。いろんな顔を見ているうちに惹かれて、気がつけば大好きになっていた。  好きで好きでたまらなかった人。ようやく人型になれて、つがいになることができた。 (僕って幸せだなぁ)  この前、お母さんから初めて手紙が届いた。なんと、先生がつがいになったことをお母さんに知らせてくれていたらしい。長くはない手紙だったけど、僕が家を出た後のことがわかった。  僕が森に置いていかれたあと、カンカンに怒ったお母さんは父親をボコボコにしたそうだ。あまりにボコボコにしすぎて、慌てて先生に薬をもらったんだと書かれていた。  それに、大きくなって僕のことを知った弟たちも、父親のことをしこたま説教したって書いてあった。「弱いものを守るのが本当に強い狼だ」なんて言っていたみたいで、弟たちはお母さんに似たとても強い狼に育ったに違いない。  そんな弟たちより強いのが、僕が家を出たあとに生まれた妹だと書いてあった。成人してすぐに修行の旅に出たらしく、そのうち僕のところに寄るだろうとのことだった。  手紙のことを思い出していた僕のほっぺたを、先生の長い指の背がするりと撫でた。 「ま、夜になればたっぷり可愛がってやるから、いまは我慢だな」  ……もう、先生ったら。困ったなって顔をしながら、僕は体が火照ってくるのを感じていた。   ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ 「先生ったら、男っぷりが上がったんじゃないかい?」 「お、わかるか? 俺、ますますいい男になっただろ?」 「最近身綺麗になってきたし、ようやくトウカちゃんの努力が実ったんだねぇ」 「トウカちゃんも苦労してんだろうからねぇ」 「こんなおじさんの面倒見てくれるなんて、トウカちゃんくらいだよ」 「ほんと、あんなに可愛いんだから、貰い手なんていくらでもあるだろうに」  あー……、なんか俺の言われよう、ひどくないか? ったく、村のおかみさんたちの口の悪さといったら、俺よりひどいときたもんだ。まぁ、トウカのことを褒めてくれるのは、悪い気しねぇけどな。  それに、口は悪いがいい人たちばかりなのは間違いない。突然森に住み着いた俺を、村の人たちは変な目で見たりしなかった。それどころか「国一番のお医者様だ」なんて持ち上げてもくれる。そのぶん、細かい要求は多いがな。  ま、おかみさんたちが元気なら旦那たちも元気だってことだし、そうすると村中が元気だってことだからいいことではある。  おかみさんたちだけでなく、村の人たちはトウカが狼だとは知らない。村に来るときは帽子を被って尻尾を隠しているからだ。  人型の狼はほとんどがそうして過ごしている。それが人と狼が揉めない最善の方法で、わざわざ狼だと言って回る必要はないからだ。  そのおかげかトウカ自身の人柄か、昔からトウカは村で人気者だった。「腕は一流だが冴えないおじさんの面倒を見ている可愛い子」というのが村での評判だ。俺への表現はいただけないが、トウカが可愛いというのは本当だから、まぁいい。 「あんたも、ちゃんとトウカちゃんを大事にするんだよ」 「おうよ」 「トウカちゃんに嫌われたら、二度とあんないい子には巡り会えないんだからね」 「そうだよ。あんたもいい年なんだから、トウカちゃんに逃げられたら終わりだよ」 「わかってるって」  おかみさんたちの言葉に思わず苦笑してしまった。  本当にトウカはみんなに好かれるなぁ。そのうちトウカとつがった……、結婚したって報告すべきだろうなぁなんて思ったら、顔がニヤけて仕方なかった。  村での診察を終えて家に帰れば、可愛いトウカが夕飯を作って待っていてくれる。出来立てのうまい飯を食い、順番に風呂を使えば、あとはつがいの時間だ。  こんな幸せな日々が俺にもやって来るなんて、以前の自分は夢にさえ見ることがなかった。  そう思っていた理由は簡単だ。俺が獣の目を持っているからだ。  魔女の村では気にならなかった目も、人の世界に入れば奇異な目で見られる。そのせいで人前に出るときは色付きの眼鏡をかけるようになったし、いまでもそれは手放せない必需品だ。  おかげで王子サマとは眼鏡仲間になってしまった。いや、向こうは恐ろしい魔女の目の力を緩和するためであって、俺のほうはカワイイもんだ。  そんな俺は、人と会うときは絶対に眼鏡を外さない。娼館にいるときでさえだ。そういった外ではいいだろうが、自分の家で四六時中眼鏡をするわけにはいかない。それに交わるときにも目を隠すなんて本来はおかしい。  だから、誰かと一緒に暮らすことは諦めていた。当然、誰かと結婚するなんてことも考えなかった。  こんなふうに自分の目を気にしていた俺だったが、家にいるときには眼鏡をしない。森に入った時点で眼鏡を取るし、トウカの前では自分を偽る必要がないからだ。  それがどれだけ幸せなことか、トウカを拾ってから何度となく実感してきた。俺の目を見ても驚かないどころか、「綺麗な宝石みたいな目」なんて言ってニコニコ覗き込んでくれたりして、あの瞬間、俺は間違いなくトウカに惚れた。  まぁちょっとトウカが若すぎたっていうか、まだ成体になる前だったっていうか……。ぶっちゃけ小さい子狼にそんなこと言われて恋をするなんて思ってもみなかった。  そのせいで、王子サマからはいまだに幼児趣味の変態だと思われている。まったくふざけんなって話だ。あいつだって立派に幼児趣味だろうが……って、王子サマたちのことはどうでもいい。 「まぁ、狼の姿でも恋に落ちたってことは、俺は狼に近いってことなんだろうなぁ」 「先生……?」 「あぁいや、なんでもねぇよ」  俺の下でうっとりしているトウカを見ながら、初めてトウカをそういう意味で意識したときのことを思い出していた。あのときは、まさか本当につがいになるとは思っていなかったんだが、いまじゃあ一緒にいることが当たり前に思えるし、離れるなんて考えることすら難しい。 「俺は心底、トウカのことが好きだなぁって思ってな。可愛い顔も感じやすい体も好きだ」 「……っ、先生の、ばか……っ」 「んな可愛い顔して馬鹿って言われても、痛くも痒くもねぇぞ?」 「んぁ! ちょっ、先生、これ、」 「たまにはおまえが上ってのもいいだろ?」 「……っ」  おーおー、騎乗位ってのにはまだ慣れないか。でもなぁ、小せぇ体が俺の上で必死に動いている姿を見ると、めちゃくちゃ興奮するんだよなぁ。  それにいい子のトウカは、上に乗っかっていても俺の言うことをよく聞いてくれる。自分で尻に挿れるのも、腰を上下に動かすのも、なんなら俺のを腹ん中でしゃぶりながら自分の性器をいじるのも、体を逸らして俺のデカブツが出入りしてるのを見せるのだって、お願いすれば何でもしてくれた。  それも顔を真っ赤にして、体をフルフル震わせながらだ。可愛い耳もぺたりとなるし、尻尾なんて俺の足をふわふわ撫でるだけで感じまくっているのがすぐにわかる。快感で力が抜けてへたり込んでも、そのぶん腹の奥にずっぽり入り込めるから、俺にとってはどっちにしてもご褒美だ。 (そのうち、尿道に棒を突っ込んで上に乗せてみてぇなぁ)  可愛いトウカのために、特別な棒を作るのもいいかもしれない。そうだな、先端にトウカの目と同じ色の宝石を付けるか。いや、鈴っていうのも捨てがたい。  トウカが動くたびにチリンチリンと音が鳴るなんて、ますますトウカが恥ずかしがりそうだ。トウカは恥ずかしいと思うほど興奮するみたいで、となれば二人とも十分楽しめるというわけだ。 「それに直接塞いでしまえば、そう簡単に吐き出せないだろうしなぁ?」  俺の独り言に何か感じ取ったのか、涙目で腰を必死に動かしていたトウカが怯えたように体を震わせた。あーあ、そんな可愛い顔をして、それじゃあもっとひどくしてって言ってるようなもんだぞ? (ま、トロットロに可愛がることしかしねぇけどな)  トロトロに可愛がってドロドロに蕩かして、頭がぶっ飛ぶくらい気持ちよくしてやるだけだ。そう思ったら無意識に舌なめずりしていたらしく、トウカが真っ赤な顔をさらに真っ赤にした。 「どうした、トウカ?」 「……先生が、すごく、……いやらしい顔、するから、」 「だろうなぁ。なんたって可愛いトウカを思う存分可愛がりたいって思ってるからな」 「せんせ、……ひんっ」  トウカの腰を掴んで、ひょいと持ち上げた。  中途半端に咥えていた俺の性器が抜けて、トウカの口からヤラシイ声が漏れる。そんな声を聞くだけで出そうになるのをグッと堪え、自分で尻たぶを開くように告げた。  小さく頭を振りながらも左手を俺の腹に乗せ、体制を整えてから右手で尻たぶを開いたのがわかった。まったく、本当にトウカは俺好みに育ったもんだ。 「ほら、もう一度先端を挿れるんだ。そう、ゆっくりでいいからな……。あぁ、いい子だ、ちゃんと入っていく」 「ん、んぅ、ふ、」 「じゃあ、ゆっくりと全部、挿れような……」 「ん、ん……っ」  頷きながら、俺が掴んだままの腰を自分でゆっくりと落としていく。そうだ、そうやってゆっくり落としていって……、あぁ、ここだな。ぐにゅっとした感触は、胎との分かれ道の感触だ。  リンゴの効果でできた分かれ道の腹側に、いつもは挿れている。すでに根元まで入るようになって、いまじゃあ尻の中に(コブ)が入っても痛がったりしない。当然、先端は曲がり角の奥にまで入り込むことになるわけだが、そこに突っ込んでもトウカは悦がるばかりで痛がることは決してなかった。  いやぁ、祝福のリンゴってのはすごいもんだな。  となれば、つぎは胎のほうだと狙いを定めてもおかしくはないだろう。まだ胎のほうに挿れたことはないが、この調子なら痛がりも怖がりもしないはず。  それに今夜はトウカの色気がハンパなかった。きっと本格的な発情に入ったに違いない。それに気づいた俺も、まるで狼のなったような気分だった。 (そうなりゃ、あとはたっぷりと種つけするだけだ) 「っ!? せんせ、そっちは、」  俺がどこに突っ込もうとしているのかわかったらしい。そりゃそうか、いくら変化したとは言え自分の体だもんな。  それにトウカには変化した後の体のこともちゃんと教えてある。きっと俺がしようとしていることがわかったのだろう。戸惑っているような顔をして、尻尾は期待してるみたいにユラユラ揺れているのが見えた。 「俺はどっちのトウカも存分に可愛がりたいと思ってる。どっちも俺だけのものにしたいし、どっちも愛したい。……嫌か?」  我ながら卑怯な訊き方だ。あぁほら、トウカの大きな水色の目がウロウロとさまよい始めた。 「なぁトウカ、駄目か?」  ダメ押しで問いかける。  うーん、俺ってやつは本当に卑怯で悪い大人だなぁ。でも、本気でトウカが嫌だと言うならいつまでだって待つつもりではいるんだ。 「……僕が、先生がすることを嫌って思うこと、ないって知ってる、くせに……」  ふにゃりと笑いながらそんなことを言うなんて、……あー、やばい。ただでさえデカくなってんのにバッキバキになったぞ。あぁほら、大きな目がますます大きくなって、……でも、もう止められねぇからな。  こうなったら胎が膨れるまで注ぎ込むだけだ。それで子ができたって構わない。むしろ喜んで受け入れるし、なんなら母親(あのひと)に自慢だってしてやる。 「んじゃ、こっちのトウカもいただきます」 「せんせ、……ひぅっ!?」 「言い方!」って叱られる前に、分かれ道の先に先端を突っ込んだ。同じ腹ん中なのにこっちはやけに熱くて、うねりもすごい。それに淫液が溢れているからか、ヌルヌルしてすこぶる気持ちがよかった。  あー、こりゃすぐに出ちまうなぁ、なんて思いながら、掴んだ腰をグッと引き下ろし、ついでに己の腰をズンと突き上げた。 「ひゃ……ふ、ぁ!」  細い首を仰け反らせたトウカの体が、一瞬ギュッと締まった気がした。  いや、気のせいじゃない。体に力が入った瞬間、尻穴が信じられないくらい引き締まった。俺を咥えた胎のほうまでギュギュッと締まって、思わず出してしまうところだった。  おーおー、尻尾なんかピンと伸びきって、毛が逆立っている。へたっていた耳もピクピク震えて、むしゃぶりつきたくなるくらい可愛いじゃねぇか。 「……はぁ、危なかった。たくさん気持ちよくしてから、出してぇからな」 「ひ、ひ……っ、ふ、ぅ……、ぅあ、ぁ、……ふぅ、ん、んっ」 「よーし、いい子だ、胎の入り口に俺のが当たってるな」 「ぁ、や、そこ、……っ! せん、せ……っ! やだ、や、ぁ……っ」 「どうした? 嫌か?」 「ちが、でもっ、ぁうっ! そこ、きもちよすぎ、て……っ、よすぎるか、らぁ……!」  ……っ、ちくしょう、ちょっと出ちまったじゃねぇか。悦すぎて嫌だなんて、どんな煽り方だ。  さっきよりも体がブルブル震えて、しかもトウカの性器から漏れてるのは……、こりゃ子種じゃねぇな。おっと、先端を指でいじったからか、プシャプシャおもしろいくらいに液体が溢れ出した。あぁ、こりゃあほとんどイッてんなぁ。なるほど、トウカは腹も胎も感じやすいってことか。 「こりゃあ、これからが楽しみだ」  行為がすこぶる気持ちいいってのは、つがいにとってこの上なくいいことだ。それに、それだけ体の相性もいいってことだろう。気持ちも体も相性がいいなんて、こんな喜ばしいことはない。 「はー……、やべぇ、もう我慢なんて無理だわ」  俺の腰の動きに合わせて、掴んだトウカの腰をグリグリ回す。すると胎の入り口に当たっていた俺の先端が、グポッと中に入ったのがわかった。 「う……っ。こりゃ、やべぇ、な……っ。吸いつきが、尋常じゃ、ねぇ……っ」  もう駄目だ、こんな名器に吸いつかれて我慢できる男がいるわけない。それに俺の本能が早く種付けしろとうるさいくらい叫んでいる。  あぁもう、こうなったら思う存分注ぎ込むぞ……! 「あ・あ――……! あぅ、すごぃ、おなか、ぉく、びゅーって、せんせ、のが、びゅーって、ぇ……」 「こりゃあ、当分止まらねぇぞ……」  しっかり(コブ)まで入っているから、そもそも吐き出し切るまで抜くこともできない。こんな本気の種つけなんてしたことがないから、どのくらいの時間がかかるかさっぱりだ。狼の平均的な時間は、どのくらいだったっけなぁ。 「ぁふ、せんせい、好き……、ラスキエンテが、だいすき……ふぁ、ん……」  涙でぐっちゃぐちゃの顔なのに、俺を必死に見ながら「好き」とか……。 「ぁう! や、もぅ、はいらなぃ……」 「いまのは、おまえが悪い」  初めて突っ込んだってのに、つい腰を突き上げちまったじゃねぇか。あー……、こりゃ胎の少し奥まで間違いなく入ってんぞ……。  まぁトウカは痛がってないし、むしろ気持ちよさそうにトロンとした目に変わってるし、問題なさそうだな。 「せんせぃ、だいすき……」  トロトロの甘い声で囁きながら自分の薄い腹を撫でているトウカに、一度目のすべてを吐き出したあと、年甲斐もなく二度目に挑んだ俺は決して悪くない。……と思いたい。  こうして胎のほうにも種つけしたわけだが、その後、トウカの体調に変化は見られなかった。初めてだったからか俺が特殊な生まれだからかはわからないが、そう簡単に孕んだりはしないってことだろう。  あの日以降、トウカは腹と胎の両方に子種をほしがるようになった。体のことを考えれば毎回はやめたほうがいいのかもしれないが、つがいに請われて種つけしない雄は絶対にいない。  そんなわけで俺は胎にも頻繁に子種を注ぐようになった。そのたびにトウカが幸せそうに蕩けるのを見ていると、種つけっていうのは受け入れる側に決定権があるのかもなぁなんて思うようになった。まぁ狼だけの特性かもしれないが。 (新しい研究項目が見つかったな)  リンゴが与える狼への効果、それに伴う体と気持ちの変化、つがいの関係性、すべてが興味深いことばかりだ。俺自身の体のこともきちんと調べてみたい気持ちにもなっている。 「トウカと出会って、俺も変わったってことか」  こういうのを運命というのかもしれない。……なぁんてガラにもねぇことを思いながら、今日もトウカと過ごせることにこの上ない幸せを感じていた。

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