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sweet home

※本編の二人がもしハッピーエンドでなかったら…  そんなifの物語 「お帰り圭クン・・・今日は遅かったね」 今まで眺めていたであろう窓から視線を俺に移した聡くんが言う。 腕に抱いた人形を揺らしながら。 デビューしてから9年が経った。 あともう少しで10周年と言う節目を迎える時に・・・聡くんは壊れてしまった。 俺のせいで。 聡くんと俺は所謂バース性だ。 たまたま受かったオーデション。 たまたま選ばれた5人。 その5人でデビューした。 オーデションに受かり、レッスンしてる内は気づかなかったけど・・・グループに選ばれデビューともなれば自然とバース性なのも分って。 圭クンは制御剤を服用して何とか俺との関係を保とうとしてくれていた。 それでも運命の相手であるαの俺がずっと傍にいれば? そんな事、話さなくっても分るだろ? どう頑張ったて、惹かれ合うのも時間の問題で。 寧ろ惹かれ合うなって言う方が無理な話でもあり、事務所のお偉いさん達はもちろん、家族や友人・・・俺達を取り巻く全ての人間の反対を押し切って番になった。 唯一、味方になってくれたのは同じグループの瑞希達だけだった。 そんな周囲の・・・ファンからも批判や罵声が聞こえる中、聡くんが俺の子を宿した。 それが・・・間違いだったんだ。 男のΩは妊娠・出産に向いていない。 なら、何故? 男のΩがこの世に存在するんだ? 考えた所で答えなんて絶対に出ないだろうけど・・・足りない頭で考えてみる。 それは・・・男が男を愛し、SEXをしても何も生みだせない喪失感が男のΩを誕生させたのでは? 仕事の報酬を求めるように、SEXにも何かしらの報酬を求めた結末が男のΩなのか? それとも・・・不妊や仕事を生甲斐とする女性が増え過ぎたのを嘆いた神の悪戯? 地球を守る為の・・・。 なら、人類など滅びてしまった方がいいのでは? こんな環境破壊しか出来ない人類など、居なくなってしまった方が地球を守れると思う俺は・・・最低なんだろうか? そんな最低な俺だから、Ωの聡くんを・・・同じグループでデビューまで果たした聡くんを愛してしまったのか? お前は苦しめばいいと。 聡くんも俺も考えが甘かった。 ただ、互いを求める欲に流されてしまったのがいけなかったんだ。 今なら、それが・・・わかる。 けど・・・番になって発情した聡くんを前にして、αの血を持つ俺のちっぽけな理性なんて勝てる筈もなく、俺はΩの誠也を欲するままSEXをしてしまった。 男のΩ特有の分泌液でヌルつかせたソコは、俺の熱を旨そうに咥え込み、射精を促すように襞を蠢かせ、俺から放たれる欲を飲み干そうとギチギチと締め上げる。 その乱れように俺は我慢が出来ず、男にしては華奢な彼の項に噛みつきながら、ヌルつき、締め上げる内部の更に奥を突きあげ精子をぶちまける。 何度も、何度も・・・。 互いの熱が止むまで。 聡くんも俺も空打ちするまで、何時もSEXは終わらなかった。 それも・・・一度だけじゃない。 発情した聡くんの躰に味を占めた俺は、互いに何日か纏まったOFFが取れれば聡くんから薬を取り上げ、無理矢理誠也を発情させて、その躰から与えられる快感を貪ぼった。 時には聡くんが自ら発情もして。 二人して欲に塗れた。 俺の腕によって縫い付けられたシーツの上で溺れる魚みたいに、俺が与える愛撫や律動にピクピクと躰を跳ねさせる聡くんがあまりに扇情的過ぎて、互いの立場も忘れて低俗な快楽に溺れた俺達。 そんな俺達に天罰が下らないとでも思っていたのか。 それともただ、俺達が馬鹿だったたけなのか。 今となってはその問いに答えを求めるだけ時間の無駄だろう。 だって・・・聡くんは壊れてしまったんだから。 その聡くんを壊したのは俺なんだから。 妊娠中も聡くんは無理して埋まったスケジュールをこなした。 周囲の批判や罵声を撥ね退けようとして。 子を孕めるのに妊娠・出産に向かない男のΩは、安静にしてなくてはいけないのに。 だから当然の如く・・・聡くんは流産した。 その頃からだったっけ・・・聡くんが妙な行動を取るようになったのは。 「圭クン・・・オレ、今・・・したい」 そう言って、収録の合間の10分しかないような休憩中にまで俺を求めてきて。 二人して狭いトイレの個室に込もって、声を押し殺そうともせず喘ぐ聡くんの口を手で塞ぎ、彼に誘われるがまま腰を振った。 まだ次の収録も残ってるから中出しは拙いだろうと抜こうとすれば 「ヤダッ・・・んんっ、なか・・中に・・・くれ、よ・・・っ」 そう強請られ、中に埋まった俺を締めつけて。 結局、俺は何時も聡くんの中に射精する。 中に出した俺の精子が腿に伝うのを見て 「また・・・オレん中で死んじゃった。  圭クンの精子・・・オレん中で死んで流れてきちゃった」 そう呟く聡くんが・・・俺は少し、怖かった。 それでもまた、聡くんから求められれば彼の細い腰を掴み、腰を打ち付けてしまう俺は・・・やっぱり最低だよな。 「あぁ・・・はぁ・・んっ・・・」 喘ぐ聡くんの口を押えようとしたらそれを撥ね退けられ 「いいじゃん・・・オレと圭クンは番なんだろ?  もう・・みんなにバレてるんだから・・・聞かせてやれば?」 そう言って、恐ろしい程に憂鬱で淫靡な笑みを浮かべた後、突き挿した俺の性器を玩具みたいにして、自ら中を抉るように腰をくねらせ、更に喘ぐ聡くんに俺は・・・恐怖すら覚えるのに、聡くんから香るフェロモンに惑わされる俺は彼の動きに合わせ腰を振る。 もう・・・二人の間に愛はなかった。 あるのは・・・番としての欲望だけ。 そうなると俺は・・・弱かった。 少しずつ、聡くんから距離を取るようになって。 彼とは違う・・・柔らかな躰で俺を包み込んでくれる女性に安らぎを求めた。 そんな俺の心情を読み取ったのか、聡くんは自殺を図ってしまう。 異変に気付いた瑞希が聡くんの部屋に訪れた時、彼が流した血の海の中で流れる水音共に聡くんは「オレが殺してしまった・・・」と呪縛の如く呟き続けてたそうだ。 発見が早かったのもあり、幸い命に別状はなかったが、聡くんの精神は壊れてしまって、仕事に復帰する事は叶わくなってしまった。 結局、解散にまで至ってしまい、瑞希達に迷惑をかけた俺は自責の念に駆られ、今までアイドルとして稼いだお金を全てつぎ込んで、病院サイドに頼み込み、特別室を用意してもらい、そこで聡くんと俺が過ごせるようにした。 201号室。 それが聡くんと俺のsweet homeだ。 惰性で愛したフリを続ける為の・・・。 「ただいま」 派遣会社の仕事を終え、明け方近くに帰っても聡くんは必ず起きて待っていてくれる。 「お帰り圭クン・・・今日は遅かったね」 今まで眺めていたであろう窓から視線を俺に移した聡くんが言う。 腕に抱いた人形を揺らしながら。 そして俺にこう訊くんだ。 腕に抱いた人形を愛しそうに見つめて。 「パパはまた、浮気してたのかな?  それは・・・オレが赤ちゃんを殺してしまったせい?」 ちぐはぐな・・・全く意をなさない聡くんの言葉に、喉元まで上がってくる胃液。 それでも俺は笑顔を浮かべて答える。 「聡くん、何言ってんの?  今、抱っこしてるだろ・・・聡くんと俺の子を」 嘔吐を堪え、何とか言葉を紡げば、聡くんは恐ろしい程に憂鬱で淫靡な笑みを浮かべて。 「そうだ・・・ね・・・うん。  でも・・・一人っ子じゃ可哀想だからさ・・・もう一人作ろうよ?  今度はオレ・・・殺さないから・・・」 そう言って身に纏ったフェロモンの香りを漂わせ、俺を誘う。 掻きむしりたくなるような濁った眼で俺を見つめて。 だから俺は湧き上がってくる胃液を無理矢理飲みこんで、聡くんを抱く。 この惰性で続ける愛を終わらせたくて。 今度こそ、聡くんと添い遂げられるのか? そう自分に問うて、思考をシャットアウトした。 こんな最低な俺達に未来なんてあるはずないだろ? 病院のベッドの上で低俗な快楽に溺れる俺にそう呟いたのは、俺自身? それとも・・・聡くん? 掻きむしりたくような濁ったその目は・・・もう、俺を見ていなかった。 END

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