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オレが復帰してからのグループの活躍は半端ねぇ目まぐるしさで。
先ず、驚いたのが年末恒例の紅白での司会だ。
1年前・・・オレと圭クンが番を解消したのが初めて紅白に出た後だった。
それからたったの1年で・・・まさか司会を任されるなんて。
復帰して初の大きな仕事が紅白の司会って・・・何だよ、それ。
一体、どうなってんだ?
一瞬、そう思ったけど・・・これって・・・オレがいねぇ間、メンバー4人で頑張ってくれたからなんだよな。
だから・・・この世界に入ったなら、誰もが1度はやりてぇって思う仕事までもらえるようになれたんだよな。
それも・・・たった1年で。
しかも・・・4人で。
すげぇよな・・・マジ、すげぇ。
4人でオレが帰ってくる場所を・・・守ってくれてたんだな。
こんな身勝手な我儘を通したオレの為に・・・。
じゃ、オレの出来ることは?
オレのいねぇ、名ばかりだけどリーダー不在のグループを守ってくれてた4人にオレも恩返しがしてぇ。
そう思ってたら・・・瑞希が言うんだ。
「聡くんは今まで通りでいいんです。
聡くんがここに・・・この場に、俺達5人で一緒ににいるって事だけでいいんですよ。
難しい事は考えず、何時もの調子でボーっと鼻でもほじって、漫画やフィギアの雑誌でも読んでてよ。
それでみんなは安心出来るから」
・・・って。
そしたら、洋祐は「ケーキ食べる?」って箱いっぱいの甘いモノ持って来るし、成一はメイクしてもらいながら鏡越しに親指立てて合図を送ってくれて。
圭クンは・・・せっかくメイク終えたのに眼尻に涙を浮かべてた。
オレ・・・こん時のことは一生忘れらんねぇ。
こん時のあの・・・4人の優しさは今でもずっとオレん中にある。
だから・・・どんなにハードなスケジュールを組まれても踏ん張れたし、前なら愚痴ってた仕事でも頑張ろうって気持ちが持てた。
それでも・・・時々、突然胸を襲ってくる虚しさはあって。
それは・・・圭クンと二人だけの仕事の時で。
雑誌のグラビア撮影なんかだと、肩を組んだりとかってのも多いんだよな。
そんな時、圭クンは小声で「ゴメン」って謝まってくんだよ・・・「ゴメン」って。
それが・・・すげぇ嫌だった。
なのに・・・心と躰は裏腹で。
「ゴメン」って謝られて胸は痛むのに、圭クンから与えられた熱をオレの肌は覚えてて、圭クンに触れられた場所が熱くなって・・・圭クンを欲して躰が疼きだす。
番を解消したって、Ωのオレにとっては圭クンだけが唯一の相手だから。
けど・・・空っぽになっちまってるオレの腹ん中が締め付けられるみてぇに苦しくなって、あの時・・・抱きしめった小さな命を思い出しちまって・・・どうしようもない空虚感が、オレの胸ん中を支配しちまうんだ。
それでもカメラマンに「笑って」と指示されれば、無理にでも笑顔を作らなきゃいけねぇから無理して笑ってると、圭クンが「大丈夫?」って訊いてくるからオレは・・・許されるんなら圭クンにこの気持ちも、子供の事も全部・・・何もかも話して、圭クンの腕に抱かれて泣きてぇって考えちまって。
でも、そんなこと・・・許されるわけねぇじゃん?
だからオレは・・・その考えを消すみてぇに頭を振り「何でもねぇよ」と圭クンに答える。
心は助けてって叫んでても。
自分で選んだ道なんだろ?しっかりしろよ!って自分で叱咤激励して・・・圭クンにも笑って見せて、なんとか二人だけの仕事をオレは乗り切ってた。
けど・・・それも時が解決してくれた。
毎日、それこそ分単位なんじゃねぇの?ってくれぇスケジュールが埋まる程、オレ等の人気は勢いを増して。
デビュー当時には考えられねぇ程のテレビ出演や雑誌掲載、それに加え毎年紅白の司会を担当させてもらい、全国ツアーはもちろん、新たなイベントの開催、24時間テレビの司会や初めて映画やドキュメンタリーの撮影が決まったり・・・慌ただしく時間はオレの上を通り過ぎてって・・・気づけばグループ結成から15周年を迎えていた。
「15年を祝うアニバーサリコンサートはデビュー記者会見をしたニューヨークです」
そうマネから聞かされ時は正直ビックリしたけど・・・ああ、やっとオレ等もここまでこれたんだって思えて嬉しかった。
15年前、事務所の社長が海外も視野にいれたグループを!ってニューヨークでデビュー記者会見をしたものの、鳴かず飛ばずだったオレ等だったからまさかこんなに・・・と思った。
そしたら同時に3年前に手放したオレと圭クンの子に想いを馳せれば胸も苦しくなった。
元気にやってんのかな・・・幸せになってるよな?
すげぇ大きくなってんだろうな・・・もう、お喋りとかもしてんのかな?
そう思うと・・・会いたくて・・・この腕にもう一度抱きしめたくなっちまって。
母ちゃんと父ちゃんは頑張ってるよ。
だから、お前も絶対に幸せに・・・笑顔でいてくれよ。
会えなくても・・・この腕に抱きしめてやれなくても、お前を何時だって大切に想ってる。
ずっと愛してるから。
届けたくても届けらんねぇ想い・・・その想いをオレはこの声に乗せて歌うから・・・どうかこのオレの声があの子の元に届け!と願い、オレはニューヨークで始まった15周年のコンサート会場に立った。
そして・・・夢みてぇな奇跡が起こるんだ。
それは・・・感極まったオレが泣きながらファンに挨拶をしてた時だ。
一成が「もう・・・いいんじゃね?」とか、何とか言ってんなぁって思ってたら、それに頷いた圭クンがオレに近づいて来て突然、オレを抱きしめてさ。
その突然の行為に「止めろよ、恥じぃだろ」って圭クンの腕ん中で暴れてたら、今度はいきなりキスされて、半ば放心状態のオレに皆が見てる前で「聡くん、俺と結婚して下さい」なんて言うもんだから、もう・・・そっからは歓声なのか悲鳴なのかわかんねぇ声で会場はいっぱいになっちまって。
そんな中で圭クンはオレ達のことを話し出した。
「驚かせてしまってすみません。
この場をお借りして俺達の事を話させて下さい。
俺は成宮 聡を愛しています。
俺はαで成宮はΩです。
俺達がバース性である事を隠し活動を続けていた事を深くお詫びいたします。
成宮と俺は番でしたが、グループを守る為に成宮は俺と番を解消しました。
けれど俺は成宮を・・・聡くんをずっと想い続けてきました。
こうしてグループも15周年を無事迎えられ、やっと俺達もファンの皆さんやメディアの方々、そして事務所にも認められる立場になれたのでは?と思い、今日、報告をした上で、俺は改めて成宮 聡に結婚を申し込もうと決意を胸に秘め、この場に立っていました。
俺の気持ちが高まって、少しフライングはしてしまいましたが。
もちろん、事務所のや仕事関係など成宮や俺・・・グループに関係する全ての方々に許可を得ています。
何時も俺達5人を支えて下さってきたファンの皆さんへの報告が最後になってしまった事を、本当に申し訳ないと思っています。
我儘を承知でお願いします。
どうか・・・俺達の結婚を許してもらえないでしょうか?
そして温かな目で俺達を、グループを見守っては頂けないでしょうか?」
そう言って頭を深々と下げるともう一度、圭クンはオレに言った。
「聡くん、俺と結婚して下さい」と。
そっからはオレの頭が真っ白になっちまって、ごめん・・・正直あんま覚えてねぇ。
ただ、すげぇ温かい拍手が俺等を包んでくれて、その拍手の中でオレからも圭クンに「オレも圭クンが好きだ。ずっと傍にいてぇ」って言ったのは覚えてんだけど・・・その後、ファンやメンバーやスタッフがかけてくれた言葉や、如何やって楽屋まで戻ったのかとか・・・想像もしてなかったことがオレの身に起き過ぎたせいで記憶が全部ぶっ飛んじまって。
記者会見とか・・・そう言うマスコミ関係の類は全部、事務所が対応してくれてたと思う。
そん中で・・・オレ達二人の事と一緒に、瑞希と一成のことも同時に発表してたような、してなかったような・・・。
でも・・・楽屋で「便乗させてもらいました」って笑ってた瑞希の顔はなんとなく記憶にあるから・・・多分、それは間違いねぇ。
で、オレがやっと落ちついた頃・・・このコンサートが決まった時から、圭クンひとりで全部・・・それこそ瑞希と一成のこととかも全部、事前に事務所の人間と話しをつけ、CMとかの各関係者にも了解を得てからニューヨークに来てたってことを聞かされて。
それには流石に頭にきたオレは圭クンに「バカヤロー!」と怒鳴って怒ったっけ。
けど・・・そんな怒りもホテルで待っていた、オレと圭クンの子の顔を見た瞬間、吹き飛んじまった。
「おかしゃん?」
オレを見て舌ったらずにオレを呼ぶ声。
その声を発した子が圭クンの母親に抱かれていた腕を振りほどくと、オレに向かって走って来た。
途中で転びそうになるから慌ててオレも走り寄れば、オレにギュッと抱きつく小さな腕が愛しくて。
オレもその小さな躰をギュッと抱きしめた。
会いたくて・・・ずっと、会いたくて。
もう一度・・・この胸に抱きしめたかったオレと圭クンの・・・。
「空輝(こうき)って言うのよ。
さぁ、私達の役目も今日で終わりね。
これからは・・・あなたと圭で大切に育ててあげてね」
「圭・・・二人を大切に。
これからは、どんな事があっても二人をお前が守って行くんだぞ」
そう言った後、圭クンのご両親はオレに微笑んでくれた。
なのに、オレときたら胸がいっぱいになっちまってお礼の言葉すら上手く出てこなくて・・・ただ、空輝を抱きしめて泣いていたら、そんなオレの肩を圭クンが抱いたのを見て、圭クンのご両親はそっと部屋を出て行かれた。
「おかしゃんとおとしゃんだ」
抱きしめた空輝がオレ達二人を見てそう呼ぶから、オレがビックリしてると圭クンが色々と教えてくれた。
「お袋がさ・・・俺等のテレビとかDVDとか見せて教えてたんだって。
聡くんをお母さん、俺をお父さんって。
空輝て名は親父達がつけてくれたんだ。
例えどんなに厚い曇が覆う空の下でも、希望を忘れず輝いていられますようにって。
聡くんと俺を想ってつけてくれたんだ。
今はどんなに辛くて、未来が見えなくても何時か必ず、この輝きを腕の中に戻せるようにってね。
ごめん、聡くん・・・ずっと隠してて。
俺・・・聡くんがあの時・・・留学した事になってた時、俺達の子を産んだのを親父から教えてもらって、知ってたんだ。
だから、聡くんが辛そうな顔してんの見る度に俺も辛くなった。
けど、俺等が世間に認めて貰えるようになるまでは、聡くんにも黙っておけって言われてて。
俺も・・・空輝に会うのは今日が初めてなんだ。
親父がさ、聡くんが辛い想いをして頑張ってるのに、お前だけが空輝に会うのは許さないって。
親父とお袋で空輝を守るから、お前は聡くんと空輝の為に歯を食いしばって頑張れ、そして誰にも何も言われない位の地位を築けってさ。
ごめん・・・俺が不甲斐ないばっかりに聡くんを苦しめちまって。
聡くん・・・俺・・・全力で、俺の命を懸けて聡くんと空輝を守ってくから・・・俺ともう一度、番になってくれねぇかな?
3人で・・・今度こそ、誰にも邪魔されずに家族になろう」
その言葉にオレは涙が止まんなくなっちまって、ポタポタと抱きしめてる空輝に涙の雨を降らせちまったら「おかしゃん、泣いてるの?」ってオレを見上げる空輝。
その真っすぐオレを見つめてくれる瞳に「空輝に会えて嬉しいから泣いてるんだよ」と伝えれば「そっかぁ」ってオレの言葉の意味をわかってんのかどうかわかんねぇけど、空輝はニッコリ笑った。
その笑顔がホントに愛しくて。
もう二度と会えねぇと思ってたオレ達の子。
そのオレ達の子が今・・・オレと圭クンの腕ん中にいる。
もう二度と絶対に、この腕ん中からこの子を離さねぇ。
この笑顔はどんなことがあっても、オレと圭クンで絶対に守る。
空輝を抱きしめながらオレは心ん中でそう誓った。
その夜は・・・事務所の計らいで、挨拶回りや打ち上げにも参加は無しになり、3人だけの時間を過ごすことができた。
夜も遅かったせいか、空輝はオレが抱きしめてる間に寝ちまって。
キングサイズのベッドの真ん中に空輝、オレと圭クンは空輝を挟むようにして川の字になって寝た。
「こう言う・・・きっと、普通の家族じゃ当たり前の事を聡くんも俺もすげぇ遠回りしたよな。
家族になんのにすげぇ時間がかかちまったけど、俺・・・聡くんと空輝を守るから・・・二人に辛い想いをさせちまった分、幸せにするから」
空輝の小っちゃな手を握ってそう話す圭クンはもう、すっかり父ちゃんの顔になってた。
だからオレはやっと・・・胸につっかえてたものを圭クンに伝えられた。
「圭クン、ゴメン。
オレだって圭クンや空輝に辛ぇ想いをさせた。
けど・・・あん時はそうするしかなかったんだ。
オレ・・・圭クンとの子が腹ん中に宿ってるってわかった時、どうしてもこの命だけは守りたかった。
オレと圭クンが愛し合った証の命を。
だから・・・事務所に言われるがまま、圭クンに黙って空輝を産んで・・・でも、まさか圭クンのご両親が空輝を育ててくれてるなんて夢にも思わなかった。
オレ・・・もう二度とこの子に・・・空輝に会えねぇと思ってたから・・・今、こうして圭クンと一緒に空輝の寝顔見てるなんて・・・なんかまだ、信じられねぇよ。
圭クンのご両親にもお礼の言葉言わなきゃいけねぇのに・・・何も言えなかったし・・・オレってマジでダメなヤツだよな。
こんなんでちゃんと空輝の母ちゃんになれっかなぁ・・・」
そう言えば
「もう、なってんじゃん。
聡くんが空輝を産んでくれたから、俺も空輝の父親になれたし、聡くんを嫁さんに出来るんだよ?
こんな幸せってねぇよ」
こう圭クンから返って来て。
オレは幸せ過ぎて、また泣いちまったら圭クンもそんな俺を見て目を赤くしてた。
オレと圭クン・・・ホント、すげぇ遠回りをしちまったよな。
空輝にも辛ぇ想いをさせちまったし、圭クンのご両親やオレ等を支えてくれてるファンやスタッフにもいっぱい迷惑や嫌な想いをさせちまった。
それに対して、これからどう応えて行くかで今後のオレ等5人もだけど・・・オレと圭クンみてぇなバース性の同性カップルや・・・Ωを見る目も変わってくるんだよな。
男同士や女性同士のバース性カップルやΩに対してはまだまだ、偏見の目を持つヤツは多い。
けどさ・・・この世界にαとΩが存在して、そこに愛がある限り・・・男同士だの、女同士だのってねぇはずじゃん?
だって、Ωはαと番になる為に生まれてくるんだ。
Ωにとって愛するαは躰の一部であり、なくてはならない存在なんだよ。
それが同じ性別だったらいけねぇのかよ?
そんなのは・・・勝手なヤツ等が決めた勝手なルールだろ?
それに・・・Ωだからって発情期があっても仕事が出来ねぇわけじゃねぇ。
Ωだって一人の人間なんだ。
仕事だってしてぇって思うし、例え同性の相手だとしても堂々と愛し合いてぇよ。
それを世間に伝える為にも、俺達二人はこの世界でもっと高みを目指さなきゃいけねぇし、オレと圭クンと空輝でとびっきり幸せな家族にならねぇと。
オレ等を応援してくれてるファンやスタッフ、そしてオレ達の後に続くバース婚のカップルの為にも。
オレと圭クンなら絶対そうなれるし、オレ等なら・・・5人でなら思い描く未来を叶えられる。
オレはそう信じて・・・隣で眠る愛しい小っちゃな手を握って瞼を閉じた。
・・・と、それからのことも少し聞いてもらいてぇんだけど・・・いいかな?
オレと圭クン、瑞希と一成は滞在中のニューヨークで挙式を上げた。
ホント、親類とお世話になってるスタッフだけを集めた簡素な挙式だったんだけど、圭クンが事前に予約してあった教会にオレと瑞希が付くと控室に何故かウエディングドレスが用意されてて。
圭クンと一成の「着てくんねぇの?」の言葉に、二人して断固拒否してやった。
多分、オレと瑞希を笑わす為のサプライズで用意してあったんだろうけど、断固拒否してやったにも関わらず
「マジ、聡くんなら似合うと思うんだけどなぁ・・・これ来て写真だけでも撮らねぇ?」
・・・って言う、圭クンの顔が結構マジで。
オレは腹に一発パンチをお見舞いしといてやった。
挙式には圭クンのご両親と、なんとオレの父ちゃんと母ちゃんまで圭クンがオレに内緒で呼んでくれてて。
父ちゃんと母ちゃんの姿を見た時は、驚くより先にやられた!って思った。
圭クンのこう言うとこも・・・オレ、やっぱ好きだ。
オレのこともオレの家族のことも大切に想ってくれてんだなぁって、すげぇわかるから。
でさ、父ちゃんなんかあれだけ圭クンを認めねぇって怒ってたくせに、式が終わった後、空輝を抱っこして圭クンに泣きながら「うちのバカ息子をよろしくおねがいします」とか言っててさ。
オレまで一緒に圭クンに頭下げさせられて「なんだよ、もうっ!」って頬を膨らましてやったら、母ちゃんもそんなオレと父ちゃんを見て泣いてんの。
オレ・・・二人に守られて、大切に育ててきてもらってたんだなぁ。
そう思うと・・・すげぇ胸ん中が温かくなったし、オレも空輝を父ちゃんと母ちゃんが大切に育ててくれたみてぇに、今までの分を取り戻すくれぇ愛情いっぱい注いで育ててやらなきゃって思った。
まぁ・・・式はこんな感じで終わったんだけど、そこからが大変だった。
何が大変だったか?って?
そりゃ、マスコミとかさ・・・その辺はもちろん、すげぇことになってたけど、それより、もっと大変って言うか・・・重要って言うか・・・婚姻届けを提出して事実上は夫婦になれたよ、うん・・・なれたんだけど・・・番に戻るのに時間がかかって。
それも夫婦になってから1年・・・1年もかかったんだよな。
その原因の1つにはグループとしてや単独の活動が増えて、圭クンと一緒のOFFの日が殆どなかったのもある。
けど・・・それだけじゃなくて。
仕事の時はオレの母ちゃんと圭クンのお母さんとで代わる代わる空輝を見てくれて、幼稚園も毎日泣かずに頑張って行ってくれるから、ついついオレが家にいる時は空輝を甘えさせちまって。
夜も一緒のベッドで寝てたりするもんだから・・・その・・・SEXができねぇって言うか。
圭クンも空輝が可愛くって仕方ねぇから、3人で一緒に寝ちゃったりするのが当たり前になっちまって。
二人揃ってOFFが取れた日の夜ももちろん、そうなるわけで。
そうこうしてる内に番に戻れねぇまま、1年が過ぎちまって。
で、とうとう痺れを切らした圭クンが、行動に出たって言うか・・・事務所に頼み込んで無理矢理1週間の休みもらってきたかと思うと、オレから薬をとりあげてさ。
空輝が幼稚園に行ってる真昼間にオレを襲ってきて・・・そっから3日目だったかな?発情したオレの項に噛みつき、圭クンの熱をオレん中で受け止めることが出来、やっと番に戻れたオレ達。
もう空輝のお迎えの時間だって言うのに、圭クンがオレを放してくんねぇし、オレも圭クンを放すことが出来なくなっちまって。
その日だけは母ちゃんに頼んで空輝を預かってもらい、一晩中・・・餓えた獣みてぇに互いの熱を貪いあった。
「ちょっと、聡くん!
聴くならクラシックにしてって言っただろ?」
今日も隣でお小言宜しくの五月蠅い圭クンに
「圭クン、五月蠅ぇなぁ・・・オレがリラックスできる曲が胎教にいいんだよっ!
空輝もこっちの方が好きだよな?」
空輝と腹ん中の子を盾に言い返してやれば、情けねぇ声を出して「え?空輝もこっちがいいの?」なんて空輝に訊いてんの。
もちろん、空輝はオレの味方だ。
「うん、ぼくもこっちのほうがすき!」
そう空輝に言われてシュンとなってる圭クン。
圭クンには可哀想だけど、子供は何時だって母ちゃんの方が好きなんだよ。
腹ん中の子も・・・な。
「ほら、圭クン・・・腹触ってみろよ。
この曲がいい!ってノリノリでキックしてんぞ!」
言えば、圭クンはソファに横になってるオレんとこに来て愛しそうにオレの腹に手を当てて。
それを見た空輝もオレんとこに来て、3人で大きくなったオレの腹に手を当てた。
ポコポコと流れてくるリズムに合わせてキックする腹ん中の子に
「ほんとだ、ぼくといっしょだ・・・おなかのあかちゃんも、こっちのほうがすきだって!」
空輝は嬉しそうに笑う。
その空輝の笑顔には流石に勝てねぇのか、圭クンも「降参です」とか何とか言って笑って。
その二人の笑顔がすげぇ愛しくて、オレも一緒に笑った。
普通なら・・・当たり前の日常。
だけど・・・オレにとっては特別で。
一緒に結婚発表した瑞希と一成も、俺達に続いて同性同士のバース婚発表したカップル達もみんな・・・オレ達みてぇに幸せでありますようにと願う。
だって・・・皆、等しく幸せになる権利があるんだから。
Ωだって・・・一人の人間として存在する意味があるんだから。
オレ・・・及川 聡は先日、産休に入ったとこ。
来月には二人目の子を出産する予定だ。
今度は・・・皆から祝福されて。
END
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