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夕食もおわって、あとは就寝まで自由時間という時刻。
一足先に風呂をすませて部屋に帰ってきた途端、ゆらりと近づいてきたデカい影に抱きすくめられた。
と、思っているあいだに。抱きしめられたままズルズル引っ張られる。筋力ありすぎ、と嫌みをいう前に――ぼすん! と、ベッドに押し倒された。
「……守屋?」
覆いかぶさってきたくせに、守屋はぎゅっと、ひっついたまま離れない。俺の髪や首すじに鼻先をつけて、まるで猫みたいにグリグリすりつける。
――無言で。
なんだなんだ? と動揺しているうちに、今度は頬を寄せてくる。くちびるを落とされて、またひっつかれる。
――無言で。
これをもうワンセット繰り返す。
……無言で。
くすぐるような体温と囲ってくる腕の力に、条件反射の熱を覚えはじめるけど。
いよいよこわくなってきた俺はたまらず叫んだ。
「ヤルならヤレよ! 生殺しか!!」
「……ヤリませんよ、したいですけど」
「どっちだよ……」
すりつけている顔はあげないまま、守屋はうなるようにブツブツと何かを言っている。
この数週間でいろんな守屋を見ているけど、いまのコレがいちばん意外な姿だ。
「やっぱりヤリません、明日までの辛抱です」
「やっぱりって、ちょっと揺らいでるじゃないか……」
同室であるのと若さあふれる体力に任せて、ほぼ毎日のように、守屋は俺を押し倒してくる。
だけど、この数日、俺はまったく押し倒されていない。それどころか、ふれられてもいない。
その理由を、俺は知っている。
「大会のために体力温存するっていったの誰だよ」
3年の引退も含めた大会だから、と。こう見えて先輩思いな守屋は、体調管理を優先することにしたらしい。
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