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つまりそういうワケで彼はいま、絶賛欲求不満である。
「そうです、だから黙って俺に抱きしめられててください」
「……ヘタレか俺様かはっきりしろよ」
そう返すと、巻きつく腕に力が入れられる。圧迫される胸に「ギブギブ!」と背中をタップしたけど、守屋は力は緩めてもはなしてくれなかった。
うれしいんだけどね、俺なんかにこんなに餓えてくれるのは――なんて、また乙女思考に拍車がかかる。
普段は意地の悪いことばかりされているし、敬語を使ってくれているとはいえ、基本的には上から目線だし。俺が勝てるところなんて年齢くらいしか、ないと思う。
だからこんなふうに甘えられると、弱っているところを見せられると……俺にできることしてあげたいなぁ、なんて気持ちが強くなる。
だって、あたりまえじゃないか。たった数日の禁欲がこたえているのは、
「……真尋さん?」
べつに守屋だけじゃなくて、
「なにしてるんですか?」
俺だって、守屋にさわりたいのはいっしょだし。
「……真尋さん、聞いてます?」
スウェットに手をかけたら、さすがにあせった手が伸びてきた。ちょっと、いやしっかりつかまれているから、なんとなく予想はついているのかもしれない。
でも、もう止まれないし。やるし、俺。
「最後までしなきゃ……いいだろ」
「は?」
「くっ、くち……でする……だけ、だからっ」
結構な決心というか、勇気をだして言ったのに、
「……したいんですか?」
気づけば、守屋は意地悪な笑みを浮かべている。
あ、またやられた――と思う気持ちが、なくはないけど。
「しっ……したい……俺に、させて」
もとより、俺に勝ち目なんてないんだし。開き直れば恥ずかしさも仕方ないで片付くし。
「……ズルくなりましたね、真尋さん」
“惚れた弱み”をナメんなよ。
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