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第2話

「あれ、悠也くん?どうしちゃったの、そんな怖い顔をして____って、ああ……分かった。あの二人を見て、ヤキモチやいてるんだ?確かに、あいつらって、いっつも親しいよな。バスケ部の一部の奴らが付き合ってるんじゃないかって噂してたしさ…………」 突如として話しかけてきた、この人は《元片陽平》____。 一条先輩と同じく三年生で、本人が言うには彼をライバルだと思っているとかいないとか____。 元片先輩は、僕が一条先輩の密かに付き合っているのを知っている。 それなのに、 「____ってことで、悠也くんさ?一条なんかと別れて俺と付き合わない?俺なら、一条なんかよりも……悠也くんのこと理解できる自信あるよ?」 元片先輩が、急に僕の目を見据えて突拍子もないことを言ってきたものだから、思わず目を逸らしてしまう。 心臓がドクドクと激しく脈打っている。 「い……っ……嫌だなぁ……元片先輩。冗談は止めてくださいよ。それに一条先輩が他の誰かと仲良くしてても、僕は彼のことが好きですから……っ…………」 うまく、話せただろうか。 緊張のせいか、口の中がカラカラに乾いていて、それすらできているか自信がない。 「へえ、はっきり言うね。でも、冗談って何?もしかして、オレがお前のこと好きって言うのが下らない冗談だって思った?周りの奴らから好かれて人望もある一条のことは信じるくせに、厄介者扱いのオレのことは信じないって?じゃあ、こうしたら……信じるのか?」 今まで飄々とした態度を取っていた元片先輩の声色が、急に低音へと変わる。 そのせいか、少し離れた場所にいる一条先輩と羽鳥の目線が此方へと移った。 「も……っ……元片先輩――いったい、何のつもりですか?」 先輩は急に僕の腕を強く引っ張り、頭に手を置くと軽くポンポンと撫でてきた。 まるで、親が子供にするような仕草だった。 何のつもりで元片先輩が、そんなことを僕に対してしてきたのかは分からないけれど、それからすぐに一条先輩が此方へと駆け寄ってくる。 むろん、子犬のように羽鳥も後にくっついてきた。 「おい……元片____お前、悠也に何しているんだ?他の皆がいるところで、こんな下らない真似をして……情けないと思わないのか?」 「何って、見れば分かるだろ?皆に好かれる優等生のお前の代わりに、悠也くんを慰めているんだよ。そんなに悠也くんが心配なら側にいてやれよ……バカ____」 「そうだな……じゃあ、そうさせてもらう。元片……分かっているとは思うが、ついてくるんじゃないぞ。それじゃあ、行こうか……沖田____」 一条先輩が、僕の肩を引き寄せてくる。 そんな様子を見て、一瞬だけ羽鳥が不満げな顔をしたものの、一条先輩が一緒にいれないと丁寧に謝ると、それからすぐに踵を返して校舎の方へと向かって走っていった。 「へいへい、分かりました……お邪魔虫は引っ込みますよ。んじゃ、ごゆっくり!!」 元片先輩も、羽鳥が去って行った後で普段のような軽々しい態度をとりつつ僕らの元から去って行くのだった。

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