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act.2 アイ オープナー~運命の出会い~

 一旦家に戻ったが、始業時間には余裕をもって出社できた。 デスクに着くと、既に書類の山が積み上がっていて、理人はげんなりしながら息を吐く。 「おはようございます。鬼塚部長」 「あぁ、おはよう」  書類に目を通しながら、パソコンを開き社内メールのチェックを行ない、ついでに会議の時間を確認する。あぁ、そう言えば今日は新入社員が来ると言っていた。出来れば即戦力になるような社員がいい。ひとつ頼んだらすべてを汲んでくれて完璧なプレゼンを持ってきてくれるような――。  まぁ、そんな人材がいれば苦労はしないのだが。    理人が働いているAcquire company(アクワイヤ カンパニー)――通称AC――。は、主に盗聴器や無線などの通信機器を新規開発・販売している企業で、最近その売上は右肩上がりで伸びてきている。元々盗聴器などの開発をメインに行っていたが、最近は携帯電話用GPS端末の販売も始めたところ飛ぶ鳥を落とす勢いで売り上げを伸ばしていた。  今や携帯会社とも提携を結んでおり、国内市場ではかなりのシェアを占めている。最近では海外にも進出しようと動いている最中だった。  簡単な朝礼を済ませ、今日の予定を確認してから席に戻ると、理人は女子社員が入れてくれたコーヒーに手を伸ばした。  砂糖もミルクも入っていないブラックコーヒーは苦くてどうも苦手だが、仕事の効率を考えるとこちらの方が集中できる気がする為、最近はミルクなしの物を頼むようにしている。  こうやってフロアを見渡してみると、昨日となんら変わらない光景が広がっている。  だが、そうじゃない。スーツで包んだ身体中に、あの男との余韻が色濃く残っている。久々にヤりすぎたせいで腰も怠いし、喘ぎすぎて声も若干枯れている気がする。  違和感に思わず顔を顰めると、「鬼塚部長、今日は一段と機嫌が悪いみたいだ」などと囁かれてしまった。  全く持って不本意極まりない。  だが、到底本当のことなど言えるはずもない。いつも部下に厳しいと恐れられている理人が男に溺れヤりすぎで腰が痛いだなんて、誰が考えるだろう?  ――それにしても……。不意に昨夜の男の欲望に濡れた低い囁きが耳に蘇ってくる。  ―――もっと虐めたくなる――――もっと僕ので乱れてください――…あの声を思い出すだけでゾクゾクしてくる。  しかもブツがデカいだけじゃなく、絶倫だなんて反則だ。思い出しただけでも腰が疼きそうになってしまう。  正直言って、あんな気持ちの良いセックスは初めてだった。  今までは自分が完全に主導権を握りながらスることが多かった。ノンケの、しかも性に疎そうな男を堕とす事に堪らない興奮を覚え、自分に夢中になる様を見るのが好きだった。  しかし、昨日の男は違った。途中から主導権はあちらに握られ、挙句の果てに失神するまで攻め立てられた。悔しかったが、身体の相性が抜群に良かったのだと思う。  せめて、電話番号位聞けばよかっただろうか? いや、ダメだ。 関係が続けば誰かに見つかるリスクがグッと高くなる。  やはり一夜限りの快楽が一番良いのだ。 またシたいだなんて思うこと自体どうかしている……。

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