13 / 127
アイオープナー ⑨
「――ふぅ……」
シャワーで汚れを落とし後始末を済ませた後、お湯を張った少し広めの浴槽に浸かって理人はゆったりと息を吐き出した。
まさかこの歳になってまで自分があんな所で犯されるなんて考えてもみなかった。
すぐそこにベッドがあったのに、そこまで待てないとかどれだけがっつくつもりなんだ。
でも、まぁ――……。
「……悪くはなかったな……」
「えっ!? 本当ですか?」
「…………!?」
不意に響いた瀬名の声に、理人はびくりと肩を跳ねさせた。いつの間にか風呂場の扉が開け放たれており、そこには一糸纏わぬ姿の瀬名が立っていた。
「…………来んなつったろうが」
「ハハッ、部長、もしかしてソッチの筋ですか? 物凄い顔してますけど。ドス利いてるし」
「プライベートゾーンは邪魔されたくねぇんだよ」
「……っ」
理人が睨みつけると瀬名は一瞬言葉に詰まり、それから少し考える素振りを見せると「あぁ、そういうことですか……」と何かを理解した様子でニヤリと笑った。
「何笑ってやがる」
「いえ別に……。それより僕も一緒に入らせて貰ってもいいですよね」
「はぁ? てめぇ話聞いてなかったのか?」
「大丈夫です。部長の嫌がる事はしませんから」
「信用出来ねぇな」
「本当にしませんって。それに……折角のラブホなんですから楽しまないと損ですよ」
瀬名はそう言うと強引に浴槽に入ってきた。
二人分の体積に耐えかねたお湯がざぶりと溢れ出す。
「おい、狭いだろが……」
「良いじゃないですか。こうしてくっついていれば」
瀬名は嬉々として言うと、後ろから理人を抱きしめた。互いの肌が直接触れ合い背中から熱が流れ込んでくる。
「強引なヤツだな」
「……そう言うの、嫌いじゃないんでしょう?」
瀬名はそう言うと、首筋にちゅっと口付けてきた。
「ふん……勝手にしろ」
理人は観念したように呟くと瀬名に体重を預けた。
事後に、こんな風に暑苦しいまでに密着してくる男は初めてだった。
実は、理人自身はこういうスキンシップが嫌いでは無いが、あまり慣れていない。
だからこそ戸惑っているのだが、それを悟られるのも面白くないのでいつもぶっきらぼうに振る舞うようにしている。
瀬名は満足げに微笑むと理人の首筋に舌を這わせながら理人の身体に手を這わせ始めた。
「ん……、おいっ」
「あぁ……やっぱり。部長の身体、触り心地がすごくいいです……この腹筋なんて、ホント凄い……」
「お前は変態か? 人の腹を撫で回すんじゃねぇよ」
「すみません。つい……」
瀬名は謝りながらもその手を止めようとはしなかった。首筋からうなじにかけて何度もキスを落としながら、ゆっくりと腹筋へ指先を移動させていく。
「はぁ……凄いな……こんなに硬いのに腰は細いんだ……それに、乳首だってこんなに小さいのにこんなに硬く尖って……」
「っ、てめぇ……マジでやめろ」
瀬名の手が胸元に到達した瞬間、理人はその手首を掴んだ。これ以上は流石に見過ごせない。
「……もう勃ってる」
「ッ……」
「可愛いですね……」
瀬名はうっとりとした表情を浮かべると、指先で摘まんだ突起をくにくにと捏ね回し始めた。
「んっ、あ……っ」
「部長……こっち向いてください」
「ん……っ」
理人は言われるがまま瀬名の方を向くと、そのまま唇を重ねられた。
「……ん、ふ……っ」
瀬名の舌が歯列を割って入ってくる。舌を絡め取られ、口腔内を舐め尽くされる。理人はそれに応えるように自らも舌を差し出した。互いの唾液を交換し合うような濃厚な口づけに息が上がり、しっとりと汗ばんでいた身体が再び熱を帯び始める。
「……っ……出るぞ」
「えっ、ちょ……部長!?」
理人は瀬名を浴槽の縁に追いやると、立ち上がり浴槽から出て行こうとする。
「お前……此処でまたするつもりだっただろう?」
「うっ……だってそりゃ……」
「てめぇのデカチン突っ込んだら、湯がナカに入って大変な事になるだろうがっ!」
「えぇ……そこ?」
不満そうに眉を寄せがっくりと項垂れる瀬名に「続きは、ベッドでな……」とわざと色気の含んだ声色で耳打ちすると、今度こそ理人は浴室を出て行った。
ともだちにシェアしよう!