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第3話

中学時代、俺はクラスメイト数人から虐めを受けていた。 他のクラスメイトは見て見ぬふり。 そんな頃、他県から転校生がクラスにやって来た。 それが隼一だった。 女子たちは隼一の爽やかなルックスと笑顔にどよめき、クラスメイトの視線が隼一に集中する。 俺にとっては、虐められる対象がまた一人増えるか、見て見ぬふりする相手が増えるか、とぼんやり思いながら、席の隣を通り過ぎる風を覚えた。 「こいつ、マゾなんじゃねー?担任にも親にも告げ口すらしないとかさー」 三人のクラスメイトに囲まれ、へたり込み、切れてしまった口の端を手の甲で拭った。 血の味がした。 当時、両親が離婚して間もなく、心を閉ざし、クラスメイトに友人すらいなかった。 ついでに他の男子生徒より成長が遅く、小柄で華奢、大人しく、それも虐めの対象になる一因だった。 母子家庭で、少ないながらの母からの小遣いも暴力と共に奪われた。 「何やってるんだ?」 不意に三人の背後から声がし、見上げると、転校生の隼一だった。 俺を見下ろし、そして、隼一の眼差しは俺を取り囲む三人へと移る。 「お前ら、何が楽しいんだ?うちの親が教頭の知り合いなんだけど、この事を話しても構わないかな?一応、流れはスマホに収めてるし、うちの親に見せても構わないよね?」 冷静でありながら爽やかに微笑み、奴らに自身のスマホを見せつけた。 三人は何も言わずに逃げ出し、俺はその場に置き去りにされた。....隼一を除いて。 「大丈夫か?」 しゃがみ込み、俺の傷を見てくれ、ポケットから取り出したハンカチで血の纏う口元を抑えた。 「ハンカチが、汚れるから」 「別にいい、それより、保健室、行こう」 「....して」 「ん?」 「....どうして、俺なんかを庇うんだ?」 一瞬、気の抜けた顔をした隼一は、すぐに優しい笑顔に変わった。 「庇った訳じゃない、許せなかっただけだよ。ほら、立てるか?」 覚束無い足取りの俺に肩を貸してくれ、保健室へ連れて行ってくれた。 保健医に初めて、処置して貰い....帰り際、 「もし、また何かあったら、いつでも俺に言えよ?俺がお前を守るから」 その言葉に俺は足を止め、隼一を見上げた。 頬に伝う生ぬるい水.... 「....泣いていい、思う存分、泣けよ。辛かったな」 俺は泣いていた。 隼一の胸の中で、声を押し殺し、ずっと我慢していた涙が溢れ出て止まらなかった。 それから、俺と隼一はいつも一緒だった。 初めての親友、それが隼一。

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