15 / 22
第15話
「えっと、あの、さ、隼一」
「ん?」
「いや、あ、明日は大学?」
どう隼一を誘うか、思考を巡らし、視界が泳ぐ。
「え?あ、んと...灯真は...?」
「俺、午後から、その、隼一は....?」
「んと...俺も午後から」
「飯、食ってかない?作るし」
単なる飯の誘いになったじゃねーか、俺のおたんこなす!
「いいけど...な、俺も作りたい」
「料理、出来んの?隼一」
「失礼な。てか、大学入ってから、自炊始めたばっかだし、灯真には負けるかもだけど」
へー、隼一の料理、食ってみたいかも。
「あ、そうだ」
「ん?」
「同じ具材で、それぞれ別の料理、作る、てのはどう?」
「いいな、それ!出来たら、審査員的な奴、欲しいけど」
俺の提案に隼一も乗り、いざ。
キッチンに向かったものの、冷蔵庫、開けたら、ろくな材料が無く、近所のスーパーに買い出しに出かけた。
肩を並べてスーパーを回る、て、なんかカップルみたいでいいな。
...て、待てよ?
俺、まだ、きちんと告ってないし、告られてもなく無い...?
「どしたー?灯真」
立ち止まり、顎に指を置き、はて、と空を仰いでいた俺は隼一に呼ばれ、慌てて、距離を縮める為に走った。
二人でカートを押しながら、あーでもないこーでもない、商品を見て周り、手分けして、購入した商品を袋に詰めた。
「なに作るの?隼一」
「なーいしょ。灯真は?」
「俺も内緒ー」
と、その時。
いきなり間近で雷が鳴り始め、雨が降って来た。突如の土砂降りだ。
「灯真、こっち!」
軒下に連れ立って走る。
「にわか雨っぽいね」
「だね」
互いに容赦のない雨を降らすグレーの空を見上げ、肩を落とす。
遠巻きに、スーパーの前に立ち尽くす買い物客、車へ走る一部の人達を眺めた。
この雨のせいで、徒歩で行き交う人は居ない。
「止みそうもないな」
隣の隼一が座り込み、俺も膝を抱えた。
「....隼一」
「どした?」
襟元を掴み、キスをした。
「....キス魔?灯真」
隼一が笑う。
「違うし!」
不意に、傘で正面が覆われた。
「....こんな所でイチャつくな、お二人さん」
座り込み、キスをして笑う俺達を傘で隠したのは、数時間前に別れた明文だった。
「....なにやってんの?明文、覗き見?」
明文が呆れ顔になった。
「いや、露出魔か、お前らは。弁当、買いに来ただけだって、ほら」
「なに」
「やる、傘。俺、車だし、相合傘でもして帰れ」
じゃーな、と俺に傘を渡し、走り出す前に、
「丁度良かった!」
隣の隼一が嬉々とした声を上げた。
ともだちにシェアしよう!