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第17話

「審査員、明文にして貰おうよ、灯真」 「審査員?なんの?」 「料理対決。同じ具材で、それぞれ別の料理を作るんだ。どうせ、スーパーの弁当、買うんなら、俺達の料理、食べればいいし」 隼一の申し出に明文は浮かない顔。 「...なんか文句あんの?」 思わず、代わりに俺が明文を睨む。 「いや、さっき、別れた奴らと一緒に夕飯って、なんだかな...。ま、弁当代も浮くしいいか」 「雨にも打たれずに帰れるしね」 「....なんだよ、本音は俺の車がお目当てか?」 隼一が狡猾な笑みを浮かべ、思わず、そのやり取りに吹き出した。 「おい、お前、後部座席だろ」 「あ、そうだった、ごめん」 いつもの癖で助手席のドアを開けてしまい、慌てて、後部座席に乗り込む。 黒髪が額に張り付き、指で掻き分け、少しつり目がちな形のいい瞳を顕にする、隼一の濡れ姿がセクシーだった。 「...灯真も濡れてるな」 隼一の細く長い指が俺の濡れた前髪を払う。 「後ろ、バスタオルあると思う」 「でも、車ならすぐじゃん」 そう、俺は言ったが、隼一はバスタオルを見つけ出し、俺の頭をわしゃわしゃ拭き始めた。 「わ!髪、めちゃくちゃになる」 にや、と隼一が笑い、バスタオルを奪い、今度は俺が隼一の頭をバスタオルで掻き回す。 「だっから、イチャつくな」 そうこうしていたら、すぐに俺のアパートの前。 遠くで雷の音はするものの雨は小降りになっていた。 「で?なに作るの、お二人さん」 「内緒だよ、な?」 「うん」 俺と隼一すら互いに何を作るか、教えあってはなく知らないくらいだ。 たまに、それぞれの手元を見たり、顔を見合わせ、笑ったり話したりしながら、それぞれの料理が仕上がっていった。

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