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隼一ver.
灯真は俺と出会い、再会して変われた、感謝している、と思っている。
俺も同じだ。
◆◆◆
灯真と再会する前。
相変わらずセフレの家のベッドで行為を終えてぼんやり天井を見上げてる。
「...つーか、タバコ。ベランダで吸えよ。ケムいんだけど」
「俺んちなんだけど?だったらお前がベランダ行けよ」
「あっそ。んじゃ、俺、帰るわ」
立ち上がりかけたら手首を掴まれた。
「まだヤリたりないの?」
浴室へ向かうつもりだった俺は思わず狡猾な笑みで男を見下ろした。
タバコを揉み消し、再びのしかかられ、唇を奪われる。
ヤニ臭いタバコの味の舌が絡まれ、体は熱を帯びてきても生理的に吐きそうになる。
表向きは爽やかな大学生。裏側は自堕落な私生活で適当な男に体を開く、だらしがない男。
中学時代、灯真への虐めを目撃し、放っておけなかった。
そして、次第に募る恋心に歯止めをきかせたかった。
灯真の知らない過去。
どうして俺が転校してきたか、を両親以外は誰も知らない。
灯真にすら話してはいない。
俺は当時、同級生と付き合っていた。
結局は互いの親にバレてしまい互いに転校を余儀なくされたが未練はなかった。
今思えば、それは恋愛ではなく「同じ」同級生と共依存のような関係だったからだと思う。
自分が同性愛者じゃないか、とは昔から気づいてはいて、疎外感に苛まれてきた。
同級生たちの恋バナを俺はただただ、たまに相槌をうち、笑顔を浮かべる。
灯真は「同じ」ではない。
同性愛者じゃない。俺の灯真に向ける視線に灯真は違和感を覚えたのかもしれない...。
仲が良かったはずが、次第に灯真は俺を避け始めた。
灯真とバイト先のカフェで再会したのはそれから数日後。
本当のところ声をかけるか悩んだ。
しばらく深呼吸をし息を整えて笑顔を装い灯真に声をかけた。
変わらず無愛想な灯真がいた。
その晩、変わらず、俺はヤケクソのようにセフレに抱かれた。
けれど、ベッドの上でもつれ合いながらも脳裏に浮かぶのは灯真の笑顔ばかり。
俺ではなく、友人に向けた笑顔だとしても...穢れた自分が嫌でたまらなくて、一方的にセフレに別れを告げた。
渡されていたスペアキーもテーブルに置いた。
灯真と結ばれなくても構わない。
ただただ、馬鹿らしい。
男を振り払い、部屋を出て夜空を見上げた。
「....せいせいした」
灯真の友人の明文と連絡先は交換した。
俺がゲイだということも、偏見はないからと色々相談に乗ってくれてもいる。
灯真とまた友人に戻れないかな、戻れたらいいな、それだけが望みだった。
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