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第21話

ふと、目を覚ますと、隣には掛け布団から素肌の肩を出し、眠る、隼一の横顔。 隼一は眠っていた。 しばらく、その寝顔を見つめる。 ...本当に、俺、隼一と付き合い始めたんだ、て実感する。 ただ、つい言い争いになってしまい、少し胸糞悪い朝。 俺は手早に顔を洗い、歯を磨くと、キッチンに向かった。 「...美味しい、朝食、作ろう」 腕まくりして、張り切った。 昨日、隼一とスーパーで買い出ししたから、食材はある。 さて、何を作ろう....。 味噌汁の味を小皿に取り、確かめていた。 「うん、なかなか」 背後からふわ、と抱き着かれた。 「おはよ、灯真。いい香り」 「あ、おはよ、隼一。歯ブラシとか昨日、買っておいたから。洗面台の上にあるよ」 隼一が嬉しそうに肩を竦めて微笑んだ。 「用意がいいんだな、助かるよ、ありがとう。灯真」 ちゅ、と頬に小さくて可愛い、触れるだけのキスをされた。 「あの、さ、隼一」 「ん?」 「...昨日はごめん。付き合い初めて、当日だってのに」 俺を抱き締める力が強まった。 「俺は気にしてないよ。それに、最初に灯真の不安を取り除けて良かったと思ってる。これからさ、付き合い始めたら、もしかしたら喧嘩だってするだろうけど...灯真との喧嘩のシュミレーションが出来た感じ」 「相変わらず、優しいね、隼一」 「灯真と喧嘩しても、必ず、仲直り出来る、てなんか、そう感じれたし...。てか、ようやく、俺たち、付き合えたんだから、離さないから、覚悟しろよ」 振り向くと、かなりの至近距離の隼一の顔。 隼一の優しい笑顔があった。 「それは俺も同じ」 「あー、キスしたいけど、歯磨かなきゃ。朝食作り、なんか手伝おうか?」 「んー」 後ろから抱き締められ、首筋にキスされながら、首を傾げる。 「ま、とりあえず、歯、磨いてくる。あ、髭も剃らなきゃ」 「髭剃りも洗面台にあるから。ムースは俺の使って?」 「さっすが。俺の好きになった灯真だな」 「そっちこそ」 喧嘩しても、許してくれて...最初に俺の不安を取り除けて良かった、なんて。 これから先も、きっと、そんな頼もしくて優しい隼一を好きになる。 隼一を避けてきた自分、避けられて、怒らせた、俺に気持ちを知られた、と勘違いしていた隼一。 離れていた時間は取り戻せないけど、その分、誤解せず、誤解させずに、その都度、話し合い、愛し合っていたい。 「美味いな」 「ホント?良かった」 二人で食べた、付き合って初めての朝食の味は忘れることはないだろう。

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