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37 自分の気持ち

 世の中って、上手くいかないことばかりだ。おれは自分が指輪を貰えない方の人間だと分かっているけれど、「いつか王子様が」来ることを夢見ていないわけじゃない。けど、現実は非情で、いつだって王子様はお姫様の元へ行ってしまう。ガラスの靴も履けないおれの元には、誰も来てはくれない。最初から、候補にも入らない。  なんて言い訳をして、良輔さん前から立ち去ったのか記憶になかった。気が付いたら寮の自分の部屋で、ベッドの上で泣きながら天井を見上げている。 『とはいえ、遠距離恋愛らしいんです。脈はあるっぽくて、押してるらしいんですけど……』  また、彼氏がいる女を好きになったのか。脈があるなんて、その女もその女だ。彼氏がいるのに芳を唆してるのか。最低だ。どうしてそういう女を好きになってしまうんだろうか。そういう女に弱いんだろうか。 (あの男……)  いつからなんだ。おれとあんなことしておいて、他に女が居たなんて。信じられない。  おれにも、二股してたってことじゃないか。他に気になる女が居たくせに、おれと寝てたなんて。おれって、芳にとってなんだったの? (やっぱり、性処理の相手――って、コト?)  ズキリ、胸が痛む。酷い。そりゃ、中に出したって妊娠しないけど。だからって。  誰かに相談したい。おれ、どうすれば良いんだろう。もう芳がおれとのこと遊びだって確定しちゃった。芳が好きなのに、芳はおれのことは遊びだなんて。おれ、どうすれば良いんだろう。このまま、都合の良い相手として傍にいることも出来そうだけど、精神がすり減って、死んでしまうかもしれない。けど、それを拒絶して芳と距離をおくなんて、今は考えられない。だって、好きなのに。おれのことが好きじゃなくても、傍に居たいのに。 「う、う……」  お姉ちゃんに相談しようか。ううん、子育て真っ最中で忙しいのに、心配なんかかけてられない。お姉ちゃんには言えないよ。 「亜嵐くん……、どうすれば良い? 亜嵐くんなら、どうする――?」  そう呟き瞼を閉じる。涙が一筋零れ落ちた。 「亜嵐くん」  ハッとしてむくりと起き上がる。そうよ。亜嵐くんに相談すればいいじゃないの。  スマートフォンを起動し、インターネットの検索を掛ける。亜嵐くんはラジオを持っており、そこにお便りコーナーがあるのだが、恋愛相談が圧倒的に多いのだ。亜嵐くんの意見ってとても的確で、いつでも視聴者の背中を後押ししてくれるのよね。  投稿はホームページから出来るはずである。早ければ今週のラジオで聞いてくれるかもしれない。 「うん。ちゃんとおれがゲイだって、隠さないで書かないとダメだよね」  よし。亜嵐くんに相談してみよう。亜嵐くんが背中を押してくれれば、きっと乗り越えられる。いつだって『ユムノス』はおれに元気と勇気をくれた。今度だってきっと、進む力を与えてくれる。

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