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第3話 おっさんの屁ってまじで致死る
ヤニで黒ずんだ歯を見せて笑う男。部屋の壁は黄ばんでいる。喫煙者の末路だ。最近、この男はこれ以上歯を黒くさせないために電子煙草に変えたらしい。
意味あんのか、それ。
弓春 は落とした目線を上げた。よく他人にはそんな目で見るなと言われる。睨んでいるように見えるのだという。でも、しょうがねえだろ。これが俺の目なんだから。普通にしてても目付き悪いって言われてみろ。グラサンかけるしかなくね? 俺、やだよ。悪目立ちするじゃん。でもさ、この巨漢はさ、グラサンを2つも付けてんだよなあ。目にかける用と、頭に付ける用。頭、オカシーよな。うん、俺もそう思う。っていうか誰か同意してほしい。この男は俺の想像を簡単に超える。
「弓春はどこにいれてえ」
電子煙草はいいな。他人を煩わせないし、本人を一時でも気休めてくれる。これを発明したやつに宝くじ買ってやりてえ。当たるかわかんねえけど。そのぐらい、価値あるよ。こいつが入れる墨よりも、もっと。
「腰の辺りかな。下着下ろさないと見えねえところ」
ぷはあ、と25メートルをクロールした後の呼吸みたいに巨人が息を吐く。あ、煙が出ねえところも好ポイント。今世紀、電子煙草がよく売れるわけだ。
「いんだよなあ。そおゆうちょっとわかってますよ感出す奴。漢なら服の上からでも見えやすいところにいれろよ。俺みてえにな」
ぐい、と着ているタンクトップの肩から手首までを見せてくる。やけに3D画質のチワワが一匹と、中国かなんかの国の神様みたいな。身体は蛇なんだけど、足が付いてて恐竜みたいになってる刺青。それを見せつけてきた。
「筒百合 サンの入れてるデザは普通じゃねー」
デザっていうのは、デザインの略らしい。俺が今、名付けた。結構、良くね?
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