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第10話

「……まあ、そういう話になるよな」  襟足ロングの金髪牧師は俺を見てこうも言った。にかっとご自慢の八重歯を見せて。しゃぶるときに八重歯が擦れて相手がすぐに鳴くらしいというご自慢の1品だ。 「弓春はうさぎさんみたいに寂しがり屋さんやからなあ。常人より辛いんよ、きっと」 「……そういうのまじ吐き気出るからやめろ?」 「すまんすまん! そんな不機嫌にならんといて。いや、でもよ。おまえはまだ15で、親離れができてないんちゃうん? せやから、親父殿に群がるペットが気になってしょうもないんやて。きっとそうやて、な?」 「……うーん」 「お前の親父殿の【ペットいい子いい子癖】は有名やからなあ」 「その言い方まじでヤメロ。昼に食った梅昆布おにぎりが飛び出るわ」 「おまー! 何言っても否定するやん。俺はこんな真剣に話してるのに。牧師の意見は素直に聞いとけばいいんやぞ。牧師に歯向かうDCとかかわいくねえかんな!?」 「っ。そんなんだったら、信者がいないときだけ教会を自分の家みたいに床とかで寝転がってる赤字牧師に言われたくないわ」  妙僕さんはぐっ、と言葉に詰まって何も言えなくなったらしい。ふふん。俺は口喧嘩にはわりと強い方だと自負している。こうやって妙僕さんを任すのは珍しいことではない。 「まあ、なんや。あれや。悲しゅうなる前にまた愚痴吐き出してこいや。俺には聞くことしかできやんけどな」  俺に反論することを諦めたのか妙僕さんが椅子に深く腰掛けて手足を脱力させる。やっぱこいつ……良い奴なんだよなあ。だからこそ、こうして人に言いにくいことも妙僕さんには話せてしまう。牧師っていうのも肩書きだけじゃねえんだよな。きっと。

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