5 / 22
第5話
「 じゃ、じゃあな、圭」
両隣に纏わりつく、真琴と三琴は一向に離れてはくれず諦めた。昼休みが終わり、別のクラスへと圭と別れる俺のクラスの教室の前。
「 くっつきすぎ!順平!」
最後、何故か、俺は圭にそう怒鳴られた。
「 いや、俺がくっついてる訳じゃ....」
フン、と鼻息を荒くし、圭がクラスに向かった。
良き理解者な圭を誤解させたか...?
休み時間。
変わらず、二人が机をくっ付け、三人で俺の教科書を見るのは、まあ、仕方ないとしても、くっつきすぎだろ!てくらいに、俺にベッタリな真琴と三琴がようやく、離れてくれ、肩をコキコキ鳴らした。
「 肩、凝ってるの?揉んであげる!」
「 じゃ、僕は腕、揉んであげる!」
右が兄の真琴、左が弟の三琴だと、授業中でなんとかわかった。
「 いや、肩凝ってるのはお前らが...」
くっつき過ぎだから、と言う前に。
「 順平ー!」
授業、終わったばかりだというのに、別クラスの圭がやって来た。
何やら息を切らしてる。
「 何、慌ててんだ?圭」
俺はもうマネキン状態で、真琴と三琴に肩やら腕を揉まれている。
気持ちいいし、好きにさせた。
が、
「 何やってんの!双子!」
血相を変えた圭が真琴と三琴を引き剥がす。
「 何すんのー、圭くん」
「 そうだぞ、圭、せっかく気持ちよかったのに」
圭に睨まれ、腰が引いた。
「 肩や腕、揉まれて、ヘラヘラしちゃって!順平らしくない!」
「 ....別に、肩凝ってたし」
「 だったら、俺に言いなよ!」
「 え?」
腕まくりしたかと思ったら圭が俺の肩を揉み始めた。
「 も、もう少し、力緩めてくれないか?い、痛い、圭」
「 ねえ、順平くんは部活、なに?」
右が聞いてきた。真琴だ。
「 あー、俺は」
弓道部、と言おうとするのに被せるように、
「 順平は陸上部だよ」
圭が答えた。
「 へえ、陸上部かあ。だったら、僕達も陸上部にしよっか?三琴」
「 だね、そうしよっか、真琴」
「 順平は弓道部だよ、双子ちゃん」
斜め前に座る友人のアルファ、田中龍介が振り返り、伝えた。
「 弓道部?陸上部じゃなくて?」
「 そ、弓道部。ちなみに俺は水泳部。丁度、部員も募集し」
「 弓道部だって!真琴」
「 弓道部にしよっ、三琴」
「 だねっ!」
背後で俺の肩を揉んでいた圭の力が強まり、
「 お、折れる、圭」
「 そう、睨むなよ、圭」
「 軽々しく名前呼びするな!双子といい、田中といい!」
だから、肩痛いから、力弱めてくれ...。
細身の体から、どっから、そんな力が沸いてくんだ。
周囲からも、俺の両親からも、細身で美人と言われている圭の握力の強さを知る羽目になった。
ともだちにシェアしよう!