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仔猫なあの子に抱かれたい【年下攻め、ちょい天然受け、本番なし、兜合わせ】
ショウはちっちゃくて可愛いねなんて言っていたのに。
おかしいなあ。
気づけば見上げる身長になってしまったお隣さんの末っ子。
俺——桜乃介 が男にしては低めの身長だから、余計に凸凹感が際立っている。
それでも変わらずにおっきな図体でくっついてきて、甘えたなところも変わらない・・・・・・うーん、そこが少々問題ありで困ったもんだ。
こんなんじゃ、将来ショウに彼女ができたときに、俺が目の敵にされてしまう。それが原因でショウが振られてしまうかもしれない。
めちゃくちゃ心配になったので・・・・・・、本人に直接、言ってみた。
そうしたら、ありゃりゃ、なんでこんなことに。
「さく兄、ひどい」
うるうると見つめてくる瞳は仔猫みたいに可愛いんだけど、体勢が・・・・・・おかしくないだろうか。
俺はショウに押し倒されていて、手首をガッチリと固定されている。
見上げる姿勢には慣れっこだよ?
でもこれはダメでしょう?
「ショウ、離してね」
パニックで冷や汗をかく。早鐘のように心臓が鼓動し、服の上からでも上下する胸が見える。動揺を隠してお願いをすると、「いやだ」と拒否をされてしまった。
ああ、弱ったなあ。どうしよう。
ショウの眉間には皺がよっていて、すごい剣幕で睨まれる。
だけど、気がついた。手首を押さえている彼の手が、小刻みに震えていた。
———そうだよね。
ほんとうは泣き虫のくせに・・・・・・。
緊張すると涙がボロボロと出てしまうくせに・・・・・・。
きっと、ただならぬ理由があるに違いない。
俺が言ってしまった言葉のどこかに、彼を傷つけたところがあったのだろう。
こんなに怒っているんだから、———ちゃんと聞いてあげなくちゃいけない。
「ショウ、俺が悪かったんなら教えてくれる? 何が嫌だった?」
そう言うと、ショウはハッとした顔をしてギュッと唇を噛む。
「言ってくれなきゃわからないよ?」
俺はちっちゃかったころと同じように、彼に優しく畳みかけた。
するとショウは凛々しい顔に変わって、「さく兄」と俺の名前を呼んだ。
「うん、なあに?」
「———言ったら。素直に言ったら、さく兄は俺を受け入れてくれる?」
「え?」
それは、どうゆう意味だろう・・・・・・。
俺が首を傾げたのを見て、ショウは少しだけ泣きそうな顔をした。
あ、しまった。
頑張って伝えてくれたのに。
俺はいつもこの顔に弱い。
泣き虫なショウ。いつも瞼いっぱいに涙をためて、俺の後ろに隠れていたね。
よしよし。もう大丈夫だよ。
———なんでも兄さんに言ってごらん?
ニッコリと笑い、俺は口を開いた。
「言ってみてよ。ショウの頼みならなんでもきくよ」
「ほ、ほんと?」
「うわ!」
ショウが頬を華やがせ、ガバッと上半身を伏せたので、彼の顔が間近に迫った。
ショウの息で耳や首をくすぐられ、俺の肌がじわじわと熱をもっていく。
おまけに掴まれてる手もあっつくて、よからぬ『イケナイ』気分になってしまう自分自身がなんだか怖くて、・・・・・・俺はショウの顔から目を逸らした。
「さく兄? 俺のことをちゃんと見てよ」
ショウが俺に言う。
「できない」
俺は首を横に振った。
「なんでも、お願いきいてくれるって言ったよ?」
「・・・・・・そうだけど、無理」
「なんで、無理なの?」
悲しげな声に、耐えられなくて視線を戻す。
「だって、———あ」
一瞬、世界が止まったのかと思った。
天と地がひっくり返ったみたいな衝撃。
眉を下げた困った顔。泣きそうな顔。だけど、必死に俺を見つめる表情が男くさくて色っぽい、はじめて見るショウの顔。
どっくん・・・・・・と心がうずいた。
彼が『欲しい』と———一秒後に動き出した頭で、一番最初に考えてしまった。
「顔、真っ赤だよ。さく兄」
それから彼の唇が近づいてきたけれど、俺は避けることができなかった。
唇が触れ合ったあとは・・・・・・なだれ込むように重なり合う。あっついショウの手が肌を這いまわり、俺の身体はどんどんと体温をあげた。
唇のあいだに舌が割って入り、歯茎や上顎、いろんなところを刺激される。ぴくんと感じた瞬間、逃がさないというように甘噛みされ、敏感な舌先を圧迫される感覚に腰がむずむずと揺れてしまった。
「これ、ひもちい・・・・・・?」
止まらないキスのあいまに聞かれて、答える余裕もなく、小さな声で喘ぎながら、ただただ彼の舌の動きを追いかける。
そんな俺の姿に満足したようで、ショウはご機嫌に俺の頭を撫で、「かわいい」「かわいい」と壊れたオモチャみたいに何度も繰り返した。
大きな身体でこんなに甘えて、「かわいい」のはショウの方だよ。
たまらなく胸がキュンと掴まれ、それと同時に俺の下半身が痛いほどに張り詰めた。
———でも、まって。
ここからどうするの?
男どうしのやり方なんて知らないよ?
・・・・・・というよりも、『やり方』って俺はヤル気満々でいたのかよ!
「ショウ、ちょっと一回止まって」
「へ、・・・・・・なんで?」
なんでって首を傾げても駄目!
「とにかく駄目なものは駄目、今日はおしまい。俺は帰る!」
行為をやめたとたん、めちゃくちゃ恥ずかしくなってくる。
俺は大声で「おばさーん、帰るね」とショウの家族に帰宅宣言をし、そそくさとショウの部屋をあとにした。
その後一人暮らしをしているアパートに駆け戻り、玄関でうずくまる。
未だに止まない心臓の音。
実家暮らしじゃなくてよかった。
お隣さんのままだったら逃げ場がなかった。
ドキドキして苦しくて、今はこの距離がありがたい。
結局怒らせた理由は聞けなかったし、キス・・・・・・、ショウはどういうつもりだったんだろう。
あ、でもわかった。彼女うんぬんの話をしたから、余計なお世話だって言いたかったのかもしれない。
ああやってキスして見せて、俺に経験豊富なところを示したのだ。
「———ショウ、かっこよかったな」
あんなに大人なキスができるんだから、きっとそうなんだろう。
見違えるようにかっこよくなったショウ。
ショウはどんな女の子とお付き合いをして、キスをするのかな。
・・・・・・もや。
「え」
あれ。もやって、なんだろう。
俺はどの部分にもやっとしたの?
———ショウの未来の彼女に?
兄同然の立場として、可愛がっている弟ぶんの恋愛事情を詮索 したって普通だ。おかしくない。けど、もやもやする。
俺に見せたあの顔を俺以外に見せるんだと思うと・・・・・・悲しくて、・・・・・・見せないでって思う。
恋愛下手な俺でも、この気持ちの正体は知っている。
俺はショウのことが好き・・・・・・?
けど自覚した時点で間違いなく失恋決定。
俺は可愛い女の子じゃないから望みなんて一ミリもない。
うん。
よし、悩むのはこれでお終いにしよう。
かなり強引にではあるけれど、俺は心のモヤモヤを自己完結させた。
そのとき、スマートフォンがブルブルと振動した。
「・・・・・・うえっ?!」
見てみると着信はショウからだ。
どうしよう。迷っているその間もバイブ音は鳴り続ける。決心がつけられずにいると、突然、ドン!と外からドアを叩かれて飛び上がった。
「さく兄、中にいるんでしょ?」
ショウの声・・・・・・!
心臓がバクバクして声が出せない。
「ねぇ、なんで急に帰っちゃったの? いきなり押し倒したりなんかしたから、俺のこと嫌いになった?」
「わ!」
俺はギョッとして声が出た。そんな赤裸々に語って、ご近所さんに聞かれたら大変だ。
ドアを開けて、さらに目を見開く。しょんぼりと背中を丸めた、まるで大きな捨て猫がそこにいるんだもの。
「さく兄・・・・・・ごめんなさい」
「い、いいから、はやく入れ」
俺はショウの手を引いて中に入れ、ドアを閉めた。
バタンとドアが閉まれば、待っていたのは沈黙。ショウはぎゅっと拳を握って俯いている。
「・・・・・・ショウ、こっちおいでよ」
玄関で突っ立ったままのショウを部屋の奥へ促すと、ショウはふるふると首を横に振った。
「いいからおいでよ。さっきのことは別に怒ってないぞ? めちゃくちゃびっくりはしたけどな・・・・・・。ほら兄ちゃん、あーゆうことに慣れてなくてさ」
・・・・・・おまけに自分の気持ちにも気づかされてしまった。
しかし、ショウは玄関から動かなかった。
「俺、さく兄と二人きりになったら何しちゃうかわかんない」
「何言って・・・・・・」
「俺はさく兄が好きなんだ」
へ。
なんて?
ぽかんとしていると、ショウは切なげに眉を顰めて笑う。
「押し倒してキスまでしたのに伝わらなかったんだね。そんなに無防備でいたら俺が襲っちゃうよ?」
「ごめ、ちょっと頭が混乱して」
頭ん中がちかちかしている。
ついさっき自分の好きに気づいたばかりで、片思い決定だと思っていたのに、もしかしてフルスロットルの早さで両思いが確定した・・・・・・?
「うん、わかってるよ・・・・・・さく兄は男なんて無理だよね。ごめんなさい。だからもうあんなことしない。でも部屋に二人きりになったら、我慢できるかわからないから——、・・・・・・っ!」
今度は俺がショウの言葉を遮って、グッとそばに寄る。
「ほ、ほんとに・・・・・・俺のこと、好きなの?」
俺はショウの目を見つめた。ショウはごくりと唾を飲み込む。
「・・・・・・好きだよ。世界で一番、さく兄が大好き。もちろん恋愛の意味でだからね」
こんな奇跡みたいなことが許されていいんだろうか。
目を逸らせないでいると、じりじりとショウの唇が迫ってきた。
「さく兄、俺とのキス、嫌じゃないの?」
「嫌じゃない。俺も、俺もショウが好き」
耳と頬が熱くなる。きっと俺の顔は真っ赤っかだ。
「奇跡みたいだよ、嬉しい、さく兄」
「・・・・・・ふ、俺も同じこと思った」
小さく笑った瞬間、唇が重なった。ぴちゃりと生々しい音がして、ヌルと舌がはいってくる。
「ン・・・・・・」
キスが気持ちよくて、下半身が落ち着かない。高ぶりかけている股間のせいで腰がひけてしまう。
だがショウにすっぽりと抱き込まれて、俺の身体の反応はすぐにバレてしまった。
「さく兄、勃ってる。俺もだよ」
ショウの長く太いそれはズボンの上からでもミッシリとカタチがわかる。
「おっきいな・・・・・・」
「そうかな。普通だよ」
いやいや、普通じゃない。
そうこうしているうちに耳朶に熱い息がかかり、俺は肩をすくめた。舌を這わされて、甘えた声で囁かれる。
「ね、いい? さく兄に触りたいよ」
可愛いショウにおねだりされて断れるわけがない。
しかし待て。
「待って、ショウはまだ高校生だからこれ以上は」
「真剣に愛し合っていれば問題ないよ」
ああ~、どうしよう。俺のショウがかっこいい。駄目だと言わなきゃいけないのに、男らしく成長したショウの瞳に捉えられ、俺のよわよわな自制心はヘニョヘニョだ。
「かわい」
「アッ・・・・・・」
耳たぶを揉まれただけでとろんとして、何も考えられない。
シャツの下に侵入してきた手は真っ直ぐに胸の突起に伸び、キュッとつねられ、ピリッとした痛みを感じる。
「ん、いっ。ショウ・・・・・・お願い、まだセックスは駄目だ」
「・・・・・・さく兄・・・・・・真面目すぎ」
「もう少し待とう、ね?」
そう言って粘ると、ショウは唇を尖らせてトスンと床にあぐらをかいた。
「んー、じゃ、これだけ」
「なにを?」
「ここ、座って」
ぽんぽんとあぐらの上に座るように促されて、俺は羞恥に染まる。しかし迷ってる隙に身体ごと引き寄せられ、ショウの腰を跨ぐように膝をついた。
「降ろしてショウ、恥ずかしい」
俺は分厚い胸板を押しやって抵抗するが、まるで反対に抱き締められ、どっきんどっきんと胸の鼓動が暴れる。
「さく兄、俺もどきどきしてる。俺も恥ずかしい。でも、さく兄に触りたくて我慢できないんだよ」
「うう、ショウ・・・・・・」
ストレートな告白が恥ずかしすぎて、このまま死ねる。
けどもういいや。十近くも歳下で弟みたいだった子に抱きしめられ、不覚にも俺は安心を覚えはじめていた。
「目ぇつぶっててもいい?」
「うん、さく兄は気持ちよくなってくれるだけでいいからね」
頭を撫でられて、涙が出てくる。情けなさから泣いているのか、嬉しさから泣いているのかわからない。ショウは俺の涙をミルクをねだる仔猫のようにちろちろと舐め、俺の名前を愛おしげに呼んだ。
俺は目を閉じたまま、ショウの呼ぶ声に答える。唇が重なり、うっとりと惚けていると、下着からペニスが引き出され、ショウのペニスといっしょに握り込まれた。
「あっ・・・・・・あ」
ぬちゃりと粘ついた音がする。
先端から先走りがこぼれていることを否定できない。
「・・・・・・ぁ、あっ」
自慰と変わらないことをしているはずなのに、自分の手よりも大きな手で何度も扱かれ、掠れた・・・・・・けれど明らかにいつもとは違った声で喉が震えた。
「ぁ・・・・・・はぁ・・・・・・ッ」
「・・・・・・やばい、俺、興奮しすぎてすぐイッちゃいそうだよ」
可愛いショウの言葉に俺はとろんと目を開ける。
余裕のない表情をしたショウと見つめ合うと、手の動きが激しくなった。
「・・・・・・好き、好き、さく兄、好き」
迫り上がってくる快感とショウの声が重なる。
これ、・・・・・・ヤバい。立派に張り出したショウのカリ部分に俺の先端がちょうど当たっている。
ごちゅごちゅと敏感な鈴口が叩かれ、腰がひくつくほどに気持ちいい。
「で、・・・・・・でるっ・・・・・・アッ、ああーーー!」
瞬間、溜まりに溜まった熱が弾けた。白濁が飛んで互いの腹を濡らし、数秒遅れてショウも達する。
「腹がどろどろ、でもあったかい・・・・・・」
はぁはぁと息を切らしながら呟くと、ショウが眉を顰め、抱きついてきた。
「さく兄、それわざとでしょ」
「え、なにが?」
意味が分からず、きょとんとする。
「・・・・・・うそでしょ、マジか」
ショウは溜息をつく。そうして困ったように「この先も前途多難だ」などと深刻な顔で言うので、俺はまたきょとんと首を捻った。
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