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【青春編】指輪の行方 1
「誰か~ これ、いらない?」
文化祭の後片付けをしていると、クラスの女子に呼び止められた。
手元の箱を覗くと、ブルーのおもちゃの指輪が仲良く並んでいた。
シルバーの土台に控えめな石がついて、キラキラ輝いている。
「女の子にはやっぱりピンクが人気でね、ブルーばかり残っちゃったのよ」
へぇ、ペアリングか。
咄嗟に、幼馴染みの想《そう》の笑顔が浮かんだ。
「これ、俺が二つもらってもいい?」
プラスチックの指輪をギュッと握りしめ、廊下を走った。
「想、どこだ?」
すぐに校庭で彼を見つけた。
後夜祭のキャンプファイヤーの揺れる炎を浴びた彼の横顔は、陰影があって思わず隠したくなるほど綺麗だった。
想はいつも楚々とした佇まいで、俺と同じ制服とは思えない程、白いシャツとグレーのズボンを端正に着こなしていた。
途端に胸の奥が疼いてくる。ドキドキと高鳴っていく。
もう俺の心の中ではとっくに認めているんだ。
『俺はこの綺麗な幼馴染みの男に、恋をしている!』
だから想の周りに女の子が集まってくると、いらついてしまう。
なぁ、お前の横に立てるのは、俺だけにしてくれないか。
そんなこと口に出して言えないから、もどかしいよ。
「あ……駿《しゅん》、キャンプファイヤーの炎が綺麗だよ」
「……想、これ、やるよ」
「え? ……でも、これは指輪だよ?」
やはり男に指輪なんて、変だよな。
「いらないなら、いい」
慌てて引っ込めようとしたら手で制された。
「待って、もらうよ! 嬉しいよ。ありがとう」
「お、おう」
想は指輪を手に取り、少し迷った後、ギュッと握りしめて制服のポケットに入れてくれた。
指につけてくれなくても、いい。
俺の片割れが、想の近くにいるようだ。
それだけで、気持ちが上がった!
辺りはもうすっかり日が暮れて、キャンプファイヤーの炎だけが俺たちを照らしている。
「これ、ずっと大事にするよ」
「大袈裟だな。ただのおもちゃの指輪だぞ?」
「でも駿からの贈りものだよ、嬉しいに決まっているよ」
「あ……あぁ」
想……!!
俺の顔が今、真っ赤になっていることには、どうか気付かないでくれよ!
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