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指輪の行方 2

 高校2年の文化祭。  僕のクラスは、世界遺産のクイズ大会を企画した。全問正解の景品はおもちゃの指輪で、男子生徒には不評だったが、女子はキラキラと目を輝かせて選んでいた。  指輪って、そんなに嬉しいものなのかな?  そんな楽しい文化祭も15時で終わり、もう後片付けの時間だ。皆、この後控えている後夜祭に向けて、ソワソワしている。 「想、ゴミ捨て、手伝おうか」 「駿、大丈夫だよ」 「そっか、気をつけろよ」 「大袈裟だね」 「想はよくぼーっとしていて転ぶから」 「くすっ、もう高校生だよ?」 「小学生の時、それでよく電柱に激突していたよな」 「い、言うなって」  掲示に使った模造紙などのゴミを捨てて教室に戻ろうとしたら、背後から声を掛けられた。 「おーい、もう後夜祭が始まるから、校舎に戻らず校庭で待っていてくれ」 「あ、うん」 「今年のキャンプファイヤーは特大だよ。期待していて」 「あ……楽しみだよ」  彼は隣のクラスのクラス委員で文化祭実行委員の菅野だ。明るくて爽やかな人柄で、リーダーシップを取れるのは、駿と似ているな。  それに引き換え……僕は相変わらず、目立つことが苦手だ。  校庭に出てみると、暮れゆく蒼い世界に橙色の炎が煌めいていた。  情熱の柱のようだ。  一気に、気持ちが高揚してくる。皆のように、テンション高く騒げないけれども…… 「想くん、もっとこっちに来たら?」 「あ、うん。でも、ここで大丈夫」  誘われる輪には駿がいないので入りづらくて、そのまま一人でキャンプファイヤーの熱を浴びていると、その向こうに駿の姿が見えた。  あんな所に立ち止まって……じっと僕を見ているのは何故だろう?  少し気恥ずかしくも、大好きな幼馴染みに見つめられるのは嬉しくて、顔が熱くなった。  なんで……僕?  きっとキャンプファイヤーの熱のせいだろう。  少し経つと、駿がこちらに向かって歩いてきた。  そして…… 「想、こんな所にいたのか」 「うん、ごめん。先に来ちゃって」 「いや……ちょっと探した。あのさ……これ、やるよ!」 「何?」  突然手中に落とされた軽い物体の正体は、おもちゃの指輪だった。  これって、今日景品に使用した物だ。  でも……どうして男の僕に指輪なんて?  素朴な疑問は、後夜祭の興奮に消えて行く。  何より大好き幼馴染みからの温もりが、嬉しかったから。 「ありがとう」  僕が笑うと、駿も暗闇の中で輝く笑顔を放った。  僕はこの幼馴染みの、人懐っこい笑顔が大好きだ。

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