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指輪の行方 3
手のひらにのせられた指輪の行方。
どうしたらいいのか分からなくて、頭の中がこんがらがってしまった。
指輪って、当たり前だが指につけるものだ。
でも僕は男だから、同性からもらった指輪をつけるのは変だよ。
そもそも……どうして駿は僕にくれたのか。
クラスの人気者で、モテる駿。駿からの指輪をもらいたがる女の子なら、沢山いるだろうに……これ、本当に僕がもらってもいいの?
そう聞きたかったが、そんなことを聞いたら、逆に意識しているみたいで変だ。でも素直になれば、心の奥では『嬉しい』という気持ちが、キャンプファイヤーの炎のように燃えていた。
そうか、僕……嬉しいんだ。
駿がじっと見つめる中、僕は指輪を手に取って、そっと制服のポケットの中にしまった。
ここがいい、ここが一番安全だよ。
「これ、ずっと大事にするよ」
「大袈裟だな。ただのおもちゃの指輪だぞ?」
「でも駿からの贈りものだ。嬉しいに決まっているよ」
「あ……あぁ」
そのまま僕たちは、何故か黙ってしまった。
この気まずさは……何だろう?
ちらりと隣の駿を見つめると、キャンプファイヤーの炎を浴びているせいか、まるで赤面しているかのように見えた。
「想……綺麗だな」
「えっ!」
まるで一瞬、僕が綺麗だって言われたような気がして、恥ずかしくなった。
今日の僕、やっぱり少し変だ。
「あー、えっと……キャンプファイヤーの炎がさ」
「あっ、うん」
駿が恥ずかしそうに、髪を掻く。
その指からポロッと何かが落ちて、駿が慌てて拾った。
えっ! それって……僕と同じ指輪?
駿が慌ててポケットにしまったので、僕は見て見ぬふりをした。
今は、突っ込んではいけない気がして。
「駿、高校生活もあっという間だね」
「あぁ、来年は受験生だしな」
「ん」
僕と駿のポケットの中には、今、同じ指輪が入っている。
小さな頃、駿と一緒に宝探しをしたことを思い出した。
駿は優しいから、いつも僕が同じ数になるように分けてくれた。
今……また、同じ物を持っている。
今日一番の思い出だよ。
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