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聖なる初恋 4
申し訳ありません。昨日更新した部分は転載ミスでした。
聖なる初恋 3 修正しました。
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「みっ、瑞樹くん‼︎」
「想くん! カイロから無事に帰国したんだね!」
テーラーの入り口で、突然、瑞樹くんに抱きしめられて驚いた。
瑞樹くんの身体からは、ほのかに花の香りがして、まるで花束に包まれたような心地になった。
「あ、あの」
「ごめん、感極まって……つい」
「ごめんね。帰国して落ち着いたら連絡しようと思っていたんだ」
父の事をニュースで知った瑞樹くんとは何度か連絡を取っていた。だが帰国したことはまだ伝えられていなかったので驚かせてしまった!
「ううん、そんなことは気にしないでいいよ。それよりお父さん、ご無事で良かった。本当に良かったね」
瑞樹くんが涙をいっぱい溜めた目で、僕をもう一度深く抱きしめてくれた。
「ごめん、瑞樹くんにも心配をかけてしまったね」
「謝ることじゃないよ。僕、なんだか自分のことのように嬉しくて」
瑞樹くんは以前、貧血を起こした僕を助けてくれた人だ。高校の同級生の同僚だったことが縁でランチをする機会に恵まれ、すぐに仲良くなった。この2年間、定期的にランチやメールをして交流を深めている大切な友人だ。
瑞樹くんが、こんなにも僕の身辺を心配してくれていたなんて。
瑞樹くん自身が幼い頃、ご家族を交通事故で失っているから、怖がらせてしまったのかもしれない。申し訳ない事をした。
「それで、お父さんのお身体は?」
「実はまだリハビリを始めたばかりで、下半身が自由に動かないから車椅子なんだ。でも、とても前向きに過ごしているから安心して」
「そうなんだね。うん、想くんの穏やかな表情を見れば分かるよ。僕も安心したよ」
瑞樹くんが今度は花のように可憐に微笑んでくれた。
「瑞樹くん、寄り添ってくれてありがとう」
「想くんは僕の親友だから」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ。瑞樹くんこそ僕の親友だよ」
「ありがとう。あの、少し照れ臭いね」
「改まって言うとね」
「僕たち、やっぱり似ているね」
「うん」
瑞樹くんと話していると落ち着く。
親友って、心強い存在なんだな。
「ところで瑞樹くんも、このお店の常連だったの?」
「うん、以前、弟のお嫁さんの紹介で。それから懇意にさせてもらっているんだ」
「僕は英国に修行に来た大河さんの通訳を手伝ったことが縁で。今日は瑞樹くんもクリスマスプレゼントを?」
「うん、お店からのDMが素敵だったから。それから洋服のお直しを頼んでいたので受け取りに」
「もしかして、あれを?」
「そう、色違いで」
「僕もだよ。じゃあお揃いになるんだね」
瑞樹くんたちとお揃いなのは大歓迎だ。
「今日は一人なの?」
「あ、今日は別行動中なんだ。その、僕へのプレゼントを宗吾さんと芽生くんが選びに行ってくれていて……だから」
ほんのりと頬を染める瑞樹くんが可愛かった。
「駿くんは?」
「僕たちも別行動。今日はお互いのプレゼントを選ぶ日なんだ」
「いいね。もう少しでクリスマスだね」
「贈り物っていいね。相手の幸せそうな顔を思い浮かべながら選んでいると、僕まで幸せな気分になるよね」
「分かる。同じ気持ちだよ」
入り口で立ち話をしていると、大河さんに笑われた。
「おーい、君たち知り合いだったのか! そんな所でいつまで立ち話してんだ? 風邪引くぞ。下のBarでホットワインでも飲んで行けよ。どうせ彼氏が迎えに来るんだろう」
「あっ、すみません」
「あっ、ごめんなさい」
僕たちは顔を見合わせて笑ってしまった。
「駿くんが迎えに来てくれるんだね」
「宗吾さんと芽生くんも来てくれるんだね」
「うん……夜の銀座は危ないって」
「僕も同じことを言われた」
「じゃあ、お言葉に甘えてしまおうか」
「そうしよう!」
瑞樹くんが甘く微笑むと、温かな日差しを感じる。
外は凍えるほど寒いのに、まるで草原か野原にいるようだ。
彼は、すごい癒やしパワーを持っている。
店舗脇の階段を下りると、BARがあった。
『BARミモザ』
「大河さんの弟さんがバーテンダーをしているんだよ」
「大河さんの弟さん? それは初耳だよ」
「すごくカッコいいから驚くよ」
「そうなんだ」
重たいBARの扉を開くと、そこは別世界だった。
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