1 / 5
第1話
俺、加賀佑太。社会人二年目になる23歳。
彼氏は同じ会社に勤める二つ年上の25歳、佐伯孝輔。
新入社員の歓迎会で、初めて先輩を見た時から好きになった。
177センチだという手脚の長いルックス。
爽やかながら、男らしく精悍で、仕事も出来るし、後輩からの信頼も厚い。
自分が関わった仕事でもないのに、部長から怒鳴られまくっている後輩を、周りは、
「言い過ぎだよね、部長」
遠巻きに、同僚たちがひそひそ言っていた中、
「僕の監督不行です、申し訳ありません、部長」
と、泣きそうになっている後輩の隣で頭を下げる勇敢な姿に、これはもう恋だと確信した。
俺はといえば、男らしさに欠け、平凡、を絵に書いたルックス。
特に小柄、て訳でもなく、まあまあ細身だが、単に筋トレとかが苦手、てだけ。
特に華やかさがある訳でもない。
が、それなりの経験はある。
愛嬌だけが取り柄なのが救いだ。
彼女はいない、と風の噂では聞いていたが、初めて、先輩を飲みに誘い、彼女がいない事は本人から直接、聞けた。
「なかなか時間がなくて」
まあ、良く使う言い訳だな、と、
「どのくらい、彼女いないんですか?」
の、次の問いに、先輩は当時、返答に困り、焦っていた。
「...やっぱり」
「やっぱり、て」
「...佐伯さんも、もしかしたら、そうですか?俺、ゲイなんです」
周りに聞こえないような小声でカウンターの隣に座る同じくスーツ姿の先輩に尋ね、カミングアウトした。
「....ああ、やっぱり、お仲間にはバレたか...。会社には言わないで貰えるか?」
不安そうに、眉を寄せて、同じく声を抑え、俺に言う。
「言いませんよ。だって、俺もそうなんですし...ずっといいな、て思ってました、佐伯さんの事」
じ、と先輩が俺の目を見つめる。
「...悪い、無理なんだ」
「...やっぱりタイプじゃないですか?それとも、好きな人がいるとか」
「いや...EDなんだ、俺。だから、付き合えない。なんとなく、加賀はウケだろう?使い物にならないから、俺の」
え、と当時、俺は驚愕に目を見開いた。
「まだ25ですよね?」
「...まあ、色々あって」
そこまで言うと、先輩はハイボールのグラスを傾けた。
ともだちにシェアしよう!