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第71話
「でさ、話の続き聞かせて?理音くんがマナミとキスするのが嫌で現場から逃げてきちゃったあと、現場はどうなったの?」
昨日あのあと、わんこは授業をさぼって理音くんに会いに行ったんだ。心当たりのある撮影スタジオが一つだけある、って言って。
そこで運よく飛び出してきた理音くんと会えたらしいんだけど、その飛び出した原因の話を聞いていた。
ファーストキスってこともあるけど、マナミとは(というか、わんこ以外とは)キスできないって言って、RIONは仕事を途中で投げ出したらしい。
確かに、RIONは今まで女性モデルと絡みはあったけど、キスはしてないもんな。あとはソロで脱いでたりとか。
「斎藤さんから聞いた話だけど、偶然同じスタジオに俺の同期の千歳くんってモデルがいて、俺の代わりにしてくれたって。前に千歳がくんが風邪引いたときに代わりに俺が引き受けたから、そのお礼にやらせてほしいって頼み込んでくれたとか……」
千歳って……………
「え!?あの、RIONとよく一緒に載ってる千歳シンジ?うわー俺千歳シンジも好き!カッコイイよな!」
「うん、すっげーカッコイイ。ひとつ年上なんだけど、頼りになる兄貴ってかんじ」
「へーぇ……アニキねぇ……」
またわんこが面白くなさそうな顔をしている。
「……なんでそんなにモデルに詳しいんだよ、うさぎどん」
「え?だって理音くんが載ってる雑誌毎月買ってるし。好きなモデルの名前くらいふつー覚えるだろ」
「俺は理音しか見てないから」
だからお前はどんだけ(略
理音くんはそんなわんこの恥ずかしい発言は無視して、話を続けた。
「大体マナミのワガママで俺に変わった企画だったから、俺を責める声はほとんどなかったって斎藤さんが教えてくれた。スタッフにはすごく申し訳ないことしたけど」
「理音が気にする必要ないだろ。つーかなんだその女、やな奴!干されるだろ」
「ああ、それは斎藤さんも言ってた」
俺が逃げたことでマナミもだいぶショックを受けて、自分がいかに藤沢さんに失礼なことをしたのかってことを少しは分かったみたいだ。いい薬だよって斎藤さんは言ってたけど。
「でも俺、キスの相手がマナミじゃなくてもきっと逃げてた」
「え?」
「昂平が見てる前で、他の誰かとキスなんてできないから。もう、こういう企画は受けないように斎藤さんにも頼んだんだ。脱ぐのとかも控えてもらう……大体俺、ファッションモデルなんだから」
ん?ちょっと待って。
「わんこが見てる前で…ってどういうこと?理音くん」
「え?…ぁっ」
まずいことを言ってしまった、みたいな顔をして、理音くんは真っ赤になった。
「俺はスタジオでお前が撮られてるところなんか見たことないぞ」
「ち、違う!なんでもない!忘れろ!!」
「いや、忘れない。どういうことだ理音。恥ずかしついでに教えろ」
「嫌だ!!誰が言うかっ!!」
「言わないと宇佐木の前でキスするぞ」
「えっ?」
俺は全然かまわないけど!!むしろそっちの方が見たい!
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