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第70話
*
「んじゃ、二人はめでたく両想いになったんだ」
現在保健室で、俺の前に座っている二人組は、校内でも有名な仲良し幼馴染コンビ、猫田理音と犬塚昂平。
理音くんは怪我人が座る用の丸椅子に腰かけて、深々と俺に頭を下げている。
「その節は多大な勘違いとご迷惑をおかけしまして……」
「別にそんな丁寧に謝る必要ないぞ、理音。お前は殴ってないんだし。殴られたの俺だし。むしろ俺に謝れうさぎどんこのやろう」
理音くんの隣で、パイプ椅子に腰かけた不機嫌そうなわんこ。俺と理音くんが仲良さげに話すのがそんなに面白くないのか。身体はデカイ癖に器の小さい男だな。知ってるけど。
「やだよ。むしろお前の変な勘違いが招いた誤解だろうが」
「そーだぞ昂平。何が俺が襲われないか心配、だよ」
それは俺も驚いた。物凄い勘違いだ。
つーかコイツは俺を野獣か何かだと思ってたのか。そりゃてめぇだろーが。
「俺は小野先生一筋だっつーの。つーかバリネコだっつーの」
「……二人して俺を責めるな」
ふふふ。
こんな風に理音くんと俺が仲良くなるのが嫌だったんだろうけど、もう戻れないからな。
「ねこ?猫は俺だぞ。宇佐木は兎だろ」
「コッチ用語でね、突っ込まれるほうをネコっていうんだよ、理音くん」
「突っ込み?何、宇佐木ってお笑い目指してんの?つまり、ボケの方をネコっていうのか?」
ぶはっ!!
「え、なに、何で笑うの?ってお前も笑うな昂平!!」
やばい、理音くんてば純粋すぎだろ。モデルってゲイも多いって聞くから絶対詳しいと思ってたのに。
これは絶対、男同士のセックスの仕方も知らないんだろうな。わんこ、ご愁傷様。
でも、色々教え込むのって楽しいから少し羨ましいかも……。
「前にも女子にどっちが猫かって聞かれたな。なんで俺が猫田なのにわかんねーのかな」
「うんうん、わんこがネコってのもなんかね、まあ画面(えづら)はあんまり悪くないけど」
「いや悪いだろ。なんで俺がネコなんだ」
「だからネコは俺だってば!お前は犬だろ!」
「そんな全力でネコ主張したらダメだよ、理音くん……危ないから」
知らないとはいえ、こっちが恥ずかしくなってくる。
本人にそんな気はないだろうに、ごめんよ理音くん。
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