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そして……、
≪ピ―――ッ≫
試合が終了した。
結果は……見事、お兄ちゃんたちが勝ちました!!
「佐倉せんぱいぃーーっっ!!」
「何セッターのくせに最後決めてんですかーっっ!!」
「うるせぇな別にいいだろ!!勝ったんだから!!」
最後に点を入れたのは、お兄ちゃんたちの先輩だったみたい!みんなでよっしゃーって喜んでて、なんだかすごく青春って感じですてき!!お兄ちゃんも、コーヘイくんもほかの人たちも、みんなかっこいい!!
「お兄ちゃんたちが勝って良かったね、カノンちゃん!」
「うん!!」
わたしはウサギさんと顔を見合わせて笑って、手が痛くなるくらい、拍手を送った。
*
「カノ―ンッ!!」
「おにいちゃーんっ!!」
体育館の一階に下りたら、お兄ちゃんはすぐにわたしを見つけたみたいで(ウサギさんが金髪だから目立ったのかな?)手を広げてくれたから、わたしはお兄ちゃんに飛びついた。
そしたら、お兄ちゃんがわたしを抱き上げてくれた。
「お兄ちゃんかっこよかったか!?」
「うん!!世界一かっこよかった!!絶対モデルのときよりもかっこよかったよ!!」←本業否定
「そっかそっかー!」←気付いてない
「でもお兄ちゃん汗臭いよ!!」
「そういうこと大声で言わない」
わたしは、お兄ちゃんの肩にかけられていたタオルで、お兄ちゃんの顔や髪をぐしゃぐしゃって拭いた。
汗は当たり前にかいてるんだけど、ホントは臭くなんかないんだけどね。シーブリーズのにおいです。
「カノン、俺はどうだった?」
お兄ちゃんに下ろされると、今度はコーヘイくんがわたしに聞いてきた。
「コーヘイくんもとってもかっこよかったよ!ずどーんって音がすごかった!!」
「そっかー、カノンはイイ子だな。うさぎどんにセクハラされなかったか?」
せ、セクハラっ!?
ウサギさんがわたしに!?
「おい馬鹿わんこ、俺を変態扱いすんじゃねぇっ」
驚いてわたしが否定する前に、ウサギさんがコーヘイくんの頭を軽く殴っていた。
「カノンをお姫様みたいに扱ってくれたよ、ウサギさん!ありがとうございました!!」
「お姫様みたいに可愛いからね、カノンちゃんは。ホラ、あそこに何か言いたそうな三人組がいるよ」
「あっ……」
ウサギさんの示す方を見ると、なんとも面白くなさげな顔をした、阪井くんと野田さん、福田さんが居た。
「阪井くん、野田さん」
「猫田、その……」
三人は何か言いたそうだけどもじもじとしていて、何も言わない。すると、スッと前に出たのはお兄ちゃんだった。
「お兄ちゃん!?」
お兄ちゃんは、ポン、と手を阪井くんの頭の上に置いてーー
「カノンのクラスメイトだろ。今日は休みなのに、わざわざ見に来てくれてありがとうな。これからもカノンをよろしく。カノンがあんまり可愛いからっていじめんなよ?」
「っ……!!」
もしかしたら阪井くんを殴るかもしれないとハラハラしてたけど、お兄ちゃんは笑顔でそう言った。そしたら……
「あ、あの!」
「ん?」
「猫田に意地悪しててすいませぇぇん!!俺実はRIONのファンなんですぅぅぅ!!」
「……はい?」
「妹ってだけでそばに居られる猫田がムカついて意地悪してすいませんでしたー!!」
さ、阪井くん、そうだったの!?
コーヘイくんがぼそりと、『カノンが好きなんじゃなかったのか…』と言った。うん、それはわたしもないと思ってたけどね。『いや、どう見ても好きでしょ』ってウサギさんが返してたけど、それはないったら!
すると。
「わ、わたしもカッコイイお兄ちゃんがいる花音ちゃんがムカついて意地悪してました!すいません!!わたしにもお兄ちゃんいるけどぶさいくなんです!!だから、だからっっ」
「わたしもお兄ちゃんがぶさいくなんですぅ!ごめんなさいー!!」
野田さんと福田さんのカミングアウト(?)
わたしをいじめてた理由は分かったけど、なんだか二人のお兄ちゃんが可哀想だよ!
「だってさ、カノン。許してやれるか?」
「う、うん。わたしも、みんながそんな気持ちでいたなんて知らなくって、遠慮なく毎日お兄ちゃん自慢しててごめんなさい。これからはちょっと控えます」
「何お前、そんなに教室で俺自慢してたの?」
ちょっと困った顔でお兄ちゃんが言う。
だってぇ……
「カノンを責めるなら俺も責めろ!理音。普段からお前自慢をしまくっているぞ。主に宇佐木にな」
「お前はちょっと自重した方がいいな」
コーヘイくんの微妙なカミングアウトに、ウサギさんが突っ込んだ。
*
お兄ちゃんたちはミーティングをして、更に練習してから帰るって言ってたから、わたしはウサギさんと先に帰ることにした。
お兄ちゃんのファンだってカミングアウトした阪井くんたちは、またお兄ちゃん情報がなにかあったら聞かせて!って堂々とわたしにせがんできた。
意地悪されるよりかは全然いいけど……うーんと、どうしようかな?だってお兄ちゃんは、わたしだけのお兄ちゃんだもん!
世界一きれいでかっこいい理音お兄ちゃん。
カノンはお兄ちゃんのことが大好き。
この気持ちは誰にも負けな……
いや。
「理音、カノンをいじめてたクソガキどもに寛大なお前も好きだぞー!!」
「うるっせーな外で言うなばかやろー!!」
コーヘイくんには、負けるかもしんない……。
番外編・花音のお兄ちゃん【終】
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