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第1話
初めて見た時から自分のオメガだと分かってた。
彼だってそう分かってた。
高校の入学式で出会った。
同じクラスの。
アルファもオメガもそれほどは多くない。
とはいえ、ここは名門校なので、一般校よりははるかに多い。
というより、一般校に行くオメガは少ない。
オメガはオメガという理由で入学をゆるされている。
アルファはアルファゆえに実力で入れる。
それがアルファだ。
競争に勝つためだけに生まれてきた。
噛まれることの防止のたまな首輪をつけた彼がオメガであることは一目でわかったし、大きな身体の自分をアルファだと彼もわかっただろう。
傍に行くと甘い匂いがした。
自分にしか分からないのだとすぐにわかった。
彼も気づいた。
互いにしか分からない匂いに。
抱きしめて腕の中に閉じ込めたい。
性欲では無い衝動。
いや、性欲以上の衝動があった。
「自分の」だ。
そう思わずにはいられなかったのだお互いに。
「番」だとわかった。
入学式が終わった瞬間駆け寄り名前を名乗り合う。
そこからはもう、自分達は互いのモノだと分かっていた。
帰りには公園でキスした。
それ以上のこともしたかったけれど、我慢した。
大事だと思ったから。
単なるオメガに欲情しただけだとは思われたくなかった。
もちろん彼はそう思わない
でも、もうアルファとオメガの性衝動は分かってた。
オメガのヒートには脳が溶けて逆らえなくアルファの本能についてはもう経験があった。
一度、外出中に突然ヒートが来たオメガの匂いに反応したことがある。
距離もあったし、そのオメガが自覚して、即効性の抑制を打ったため、大事には至らなかった。
アレとこの湧き上がる感情と欲望と愛しさを一緒にれたくはなかった。
手順を踏んで番にすると決めていた。
発情したから抱くのではないと知らしめなければならない。
自分がアルファの家系で、かなり大きな権力を持つ家の出だからこそ、オメガを迎える態勢を整えたかった。
彼が嫌な思いをするようなことは少しでもあってはいけないのだ。
彼はベータの家系に生まれた、一般家系のオメガで、この学校に入れたのもオメガだったからだけの理由だとわかっていたからこそ。
そう。
強い性衝動を持つアルファとオメガは早く相手を得て落ち着く必要があるため、同じ学校に通う。
早く番を見つけるために。
オメガの入学が許可されてあるのはアルファを得るためでもある。
もちろん、埋め込みタイプの抑制剤は学生生活には必須だ。
埋め込み型の抑制剤が開発されたため、学校でヒートが発生することはない。
思春期の不安定なヒートは今ではない。
オメガ達はヒートを起こさないようにホルモンをコントロールするマイクロカプセルを埋め込まれ、ベータとかわらない生活が送れるようになっている。
だが、何年も使うべきものではないため、高校時代に相手をみつけ、番になることが推奨されている。
だが、自分くらいの家になると、番のオメガを決めるのもそう簡単ではないのだ。
番にするだけなら本能でいいが、それだけで彼を苦しめるわけには行かない。
子供だけ産ませて、取り上げて、彼以外の他のオメガを妻として宛てがわれることも有り得た。
それくらいアルファの家族は要求してくる。
アルファは家族と言えど、利用するべきものだからだ。
きちんと環境を整えて、それから。
そう決めた。
それが出来る自信もあった。
アルファだから当然だ。
自分の思い通りに自分てしてこそ、アルファだからだ。
発情期でもないのに匂う彼の匂いに、その身体に焦がれはしたけれど、耐えられたし、身体を繋がなくても彼と居るだけで幸せだった。
アルファとしてのバワーゲームを始めた。
彼を安全に迎え入れるために。
それは順調だった。
アルファ同士の一族なので、そこは熾烈な争いでもあった。
アルファはアルファ同士で戦い合う。
身内同士でも。
まあ、それは本能でもある。
自分のオメガの前でだけ、心を許せるのがアルファなのだから。
唯一の心のやすらきになるオメガを娶るためになら何でもするつもりだった。
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