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#スイーツ男子のお相手は色彩鮮やかで繊細なマカロンのような彼⑨
お店を出ると更に眩しく盛り上がる歓楽街。行き交う人の数も増え、強面 兄さんやセクシーなお姉さん達が店前でキャッチをしたり看板も持って立っていた。三人は気持ち少し身を屈めて早歩きで駅へ向かう。
金曜日の夜だけあって仕事後に飲んだ帰りだろうとわかりやすいサラリーマンが仲間に介抱されながらよちよち歩く姿。
大人はこうゆう場所に仕事の疲れを癒したり、ストレス解消に来るんだな〜なんて横目でそんな大人達を見ながら思った。電車に乗るとそこそこ混み合っている車内で吊り革に捕まり三人並んで立つ。
「美味しかったし、タダで高級肉食べれてある意味ラッキーだったね〜」
「俺はあんま納得行ってへんけどな!」
「へぇ〜そんな事言ってもいいの?私知ってんだからね。明希、財布に3千円しかないの!」
「ちょ、、何言うねん!ちゃうわ3千5百円あるわっ!」
『明希それじゃ半額にしても足らないよ。支払いどうするつもりだったの?』
「それはー…後で返すつもりやったんやけど」
「ほらねっ。そんな事だろうと思った!じゃ良かったんじゃん。あの人達に出してもらえてさ」
確かに彼らのような煌びやかな世界の人間が日常的に行くようなお店で僕らなんか見下されても仕方ない。やっぱり僕は数百円のケーキが似合ってるし性に合っている。
完全に相手のテリトリーに迷い込んで虎に喰われた鹿のようなものだ。
「でもさZeal Nineってどっかで聞いた事あるんだよねー!どこだっけかな〜」
『えっ!?何っ?いつみってホストとか行くタイプだったたの!?』
「違うよっ行くわけないじゃん。ただお店の名前は知ってたってだけ。たぶん結構有名店なんじゃないかな」
「最近はホストもテレビ出たり動画配信したりタレントみたいな事しとるの見るからそんな感じちゃう?目障りでしゃーないけどな!」
明希にとってホストは相当嫌いな人種らしい。何か恨みでもあるのかってくらいしばらく批判の口は止まらない。
「はいはい!僻 まないの〜!あっ着いた。じゃ私ここで乗り換えだからまた月曜日!」
いつみはそう言って手を振りながら電車を降りた。多くの人が下車して余裕が出来た車内、目の前の席が空き二人で並んで座る。
「そうや暖、明日何してるん?」
『うーんと、別に予定はないけど何で?』
「せやったら勉強しようや。久々に家行ってええか?どうせ1人でおっても寝とるだけやろ?」
『酷いなぁ!最近はまじめにやってるってば!』
今までも勉強をしに家に来た事があり、ほぼ僕の家庭教師に来たかのようにひたすら教わる。明希自身の勉強にならなくていつも申し訳なく思う。
明日の約束をしてるうちに明希の最寄り駅に着いた。"ほな明日"と言いながら降りた人波に消えていく明希の背中を自動ドアの窓から見送る。
あの泥酔ホストが僕に触った時、初めて明希のあんな声を荒げる姿を見て正直驚いてしまった。
仲良しだけど知り合ってまだ月日は浅い。きっとまだ明希の事もいつみの事も知らない事はたくさんあるんだろうな。
一人で電車に揺れながら家までの時間、周りの雑音を消すようにイヤホンを指し終点の駅を目指した。
『ただいま、、ってもう寝てるよね』
帰宅するとそっと音を音を立てないように靴を脱いでドアを閉めて鍵をかけた。パチっと廊下の明かりがついてビクッと肩を揺らすと母親が立っていた。
「あら。今帰ってきたの?」
『あっ起こした?、、ごめん』
「まだ起きてたわよ。遊んでたの?早くお風呂入って寝なさい」
『あっうん。そうだ、明希が明日家に来て一緒に勉強するけどいいよね?』
「あんた明日は陽のサッカーの試合一緒に見に行くって言ってたじゃない」
『あっ……忘れてた、、でも陽も僕がいない方がいいと思うし父さんと二人で行ってきてよ。明日は明希と勉強するから』
そう言って暗い階段を上がり陽の部屋の前を静かに通り過ぎそっと部屋に入った。なんか色々あった一日で美味しい最高級のお肉も食べたのに満たされない何かがある、、
そしてふと机の上に置かれたピンクの紙袋が目に入った。
『あっまだ、あのマカロン残してたんだ!』
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