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#スイーツ男子の失恋はラムレーズンの熟した悲観と未来への調和⑩

 『えっ、、えっ!?大我が僕を!!?そんなわけない!そんなのあり得ないぃぃぃぃぃ!』  愛猫が突然の暖の声に驚いて大我の腕の中から飛び出した。そして器用にジャンプしてドアノブを下げてスーッと外へ出て行った。  『ほら暖が大声出すからいっちゃったじゃん』  『ごめんっ、、でもだって、、』  「もしかして猫に嫉妬した?それとも二人きりになりたくて追い出したかったとか?」  『違うッ、!僕はただー…んっ!』  暖の言葉を塞ぐ様に触れた大我の口唇。何が起きてるのか分からないけど温かくて柔らかくて優しい、これがキスってやつなのかと生まれて初めての感覚に自然に目を閉じた。  甘い彼の甘いキスに身体中がとろけてしまいそうで、どんな名店のどんな有名スイーツでも叶わない味だ。  「ごめん、急に」  『ん、、いやすごく美味しかったよ』  「え?美味しい??もう〜こんな時でもスイーツの事ばかり考えて。ムードもへったくれもないじゃん」  『だって本当なんだもん!世界で一番だよ』  「初めてだよ、キスした後に世界で一番美味しいなんて言われたのは。やっぱり暖は面白いわ。よしっ、今日で偽の恋人は終わり!」  『えっ、え、終わりって!?』  暖の焦った顔を見て、ふふっと笑った大我。いちいち反応が可愛くて意地悪してやりたい気持ちだが今は素直に暖の手を握って嘘偽りない気持ちを伝える。  「俺と本当の恋人になってくれない?」  大我の真剣な眼差しは暖の胸に強く突き刺さる。振られる覚悟での告白がこんな風に戻ってくるなんて。  『い、い、いいの?ぼ、僕なんかで?』  「だって初めて偽の恋人になってって言い出したのは俺だから。偽を辞めるのも俺からじゃないとね」  約3ヶ月前この部屋で出会った二人。 "偽の恋人になって"から始まったおかしな関係は配信の中で何万人に観られてきた。それを偽の恋人だと疑うものはきっと居ないくらいリアルに演じていた。  それがいつからかお互いを好きになっていて、 二人の思いが重なるまでそんなに時間はかからなかった。  『こ、これからよろしくお願い致します』  「何でそんな固い言い方?」  『僕、誰かと付き合うのは初めてだから。恋人って言われてもいまいちピンと来なくて、、』  「これから一緒に経験していけばいいよ。それに何もしなくても一緒にいれるだけていい。恋人ってそうゆう存在でしょ」  スイーツでしか心を満たすことがなかった19年間の人生に"愛"と言う味を知った。 暖はゆっくり大我の背中に手を回して抱きしめた。ぎゅっと強く力を込めて少し泣きそうな暖を抱きしめ返した大我。  スイーツはいつも冷えているけれど恋人はとても温かくて糖分100%だ。    『あっ、あのさ、良ければ今日泊まって行く?家族帰ってくるの明日なんだ』  「そうなの?でもー…」  『お願い。このまま一人になりたくないし、まだ一緒にいたい』  「ねぇ、そんな目で見つめて泊まりを誘うなんて本当に初めての経験?」  『ほ、本当だよっ!嘘じゃなく大我が初めての恋人なんだからっ』  「ははっ。ほんと暖っていじり甲斐があって可愛い。それじゃお言葉に甘えて泊まろっかな」

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