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#スイーツ男子の失恋はラムレーズンの熟した悲観と未来への調和⑨
暖の初めての告白は縁がデコボコしたケーキ皿の様な白い壁した自分の部屋。相手はストロベリーのようなピンクの髪色にモンブランのような丸い瞳、チュロスのようにすっと細い鼻に焼き林檎のような水々しい赤い唇、そして粉砂糖のような柔らかく繊細な白肌。
まさにスイーツの様な彼に心惹かれて幸福感と安心感を抱き愛してしまうのは必然だ。
"次の相手が見つかるまでの期間限定の関係"そう2人でのルールを決めた。その時はこんな気持ちになるとは知らずに。
「暖それ、、本気?」
大我は驚きを含んだ何とも言えない言葉を返した。期間限定の一時的な関係のルールを破る事はつまり関係終了意味する。
それでも気持ちを隠す事に限界を感じ告白をした。繊細なスイーツほど賞味期限は短時間ですぐ食べないとなくなってしまうんだ。
"大我と言うスイーツに恋をした"
『う、うん。なんか、、ごめん』
「謝る事ないけど」
『ぼ、ぼ、僕ね告白って人生で初めてなんだ。だからっ、今の言い方で合ってるか分かんないけど』
「たぶん合ってるよ』
思いを伝えたはいいものの大我と言うスイーツは甘い反面、何を考えているか分からない苦みも含んでいる。しばらくお互い黙ったまま、まさにフォークで口に運んだスイーツを舌の上で味わっている状態で静かに部屋が静寂に包まれた。
どこからかニャーと鳴き声が聞こえて二人が振り向くとカーテンから愛猫がスッと顔を出した。昼間窓際のポカポカ日光で居眠りしていた猫さえも二人の会話を聞いて耐えられなくなって出てくるくらい突然の展開だ。
『あっ!いつからそこに!?』
ぴょんと机を飛び越えて大我の足元に擦り寄って顔を上げクリクリした目を向けた。大我は体を抱き上げで腕に納めて顎下を指で触ると、飼い主の暖にも見せない顔して気持ち良さそうに甘える。
「ん?久しぶりだな覚えてるか?この可愛いやつめ〜」
『、、僕にはちっとも近寄らないのに何大我にはそうやってすぐに甘えるんだよ』
「いいじゃん。この子も飼い主と一緒で俺のことが好きみたいだね」
その言葉を聞いて暖の少しピンクになっていた頬は更に赤くなる。告白される事なんて数え切れないほど経験している大我は至って冷静に猫を撫でている。きっと何言ってんだと呆れてるしもう関係はここでお終いか。
「俺も好きだよ。毛並が柔らかくて目がまんまるで、、優しくて、、周りに合わせて生きてきたけど本当は自分の意志をしっかり持っているところとか」
『、、えっ!?何、、猫……』
「あとはつい意地悪したくなるくらい反応が面白くて可愛らしいところ」
大我は猫に向かって話していたのにいつの間にか目線は暖に向けていて、赤らんだ顔のほっぺを見てニコッと笑った。
「二人作ったルールだから二人で破っても問題ないよね」
『えっ、それはー…どう言う意味、、』
「だから俺も暖の事を好きだって事。今までずっと偽の恋人を演じてたけどこれは本当の気持ち」
偽物と本物の気持ちが入り混じっていた数ヶ月間。画面で視聴者が見ていた2人は偽の恋人だったはずだった。暖もそんな関係のまま終わりが来ると思っていたのに。
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