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再びの夫婦─檻─ 1

──窓を障子で閉め切られた、薄暗い部屋。 外が明るい方であるからか、ぼんやりと薄明るく感じられるが、悪天候や日が暮れた後だと、手元程度しか見渡せない程であろう。 しかし。この十二畳程度の和室の大半を占める座敷牢に囚われている者にとっては、どんなに天候が悪かろうか、外が暗くなろうか、関係ないと思われる。 何せ、視界は布で遮られているのだから。 もっと他に言うと、口や両手、両足ともそれぞれ封じ、縛られ、その者の背後の、部屋のほぼ中央にあるという不自然な太い柱に括りつけられ、行動を妨げられている。 しかも、それらだけでは飽き足らず、後孔にはスイッチの入ったバイブが挿()れられ、それを勝手に出させないようになのか、貞操帯を取り付けられた上に、太もも辺りとふくらはぎに縄で縛り、否が応でも正座させる格好となり、無機質な機械音と、口枷から漏れだす声にならない呻き声を上げ続けていた。 こんなにも身動きが取れずとも、せめて、精を放つことだけでも気は紛れるかといつの日かは思っていた。だが、それすらも先ほど述べた貞操帯のせいで、自身の意思では放つこともままならず、ただ痛い思いをするだけだった。 ところが、この者にとっては、その痛みでさえも快感へと変わってしまうのだから、始末に負えない。 そう、その快楽に溺れるしかない日常の中で、その者は辛うじて理性があった頃、何故、自分がこのようなことをされているのかと考えたことはあった。 こうなる前はもっと自由で、外に行けなくなってしまった自分を気遣って、代わりに買ってきてくれたり、話し相手もしてくれた。 ──外に行けなくなってしまった理由って、なんだっけ。 その疑問が浮上したものの、次から次へと溢れてくる快感を得たいという気持ちに押し潰されてしまい、考えられずにいた。 それでも、必死になって考えているうちに他のことが思い浮かんだ。 それは、金髪に毛先が茶色く、いかにも不良という出で立ちの、愛想が良くなかった人。 初めて会った印象は、ただ怖くて、実際に話してみても、どこか恐怖を覚えて。それに、すぐに怒るものだから、怒られ慣れてない自分にとっては、その時はいつも身が竦んでいた。 それでも。"彼"は、不器用ながらに優しくしてくれようとしていた。 その不意打ちとも言える優しさに触れていくうちに、何度高鳴る鼓動を抑えつつも、嬉しくなったことか。 けれども。そのことでさえも、いつ終わるか分からない享楽に塗り潰され、"彼"の顔も泡のように消えていった。

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