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再びの夫婦─檻─2

「──葵」 不意にとも思える、名を呼ばれたのと同時に、布を取り払われる。 いつぶりかは覚えてはおらず、けれども、暗かった視界から薄暗い室内、しかし、ぼんやりとしており、思わず眉を潜め、何度も瞬いた。 と、目の前にいるらしい人物が次に口枷を外し、顎をすくった。 「葵。何をそんなに不快そうな顔をしているの……? 僕のことがそんなにも嫌い?」 この声は。 自分を指一本も動かせない格好をさせ、あの時──高二になったのと同時に、一室に閉じ込めさせた時以上の"お仕置き"を施した張本人だ。 身体が震える。 「……ち、……が……っ」 「違わなくないよね。嫌いであるから、僕の元から去ったんだよね。僕以外の人のことを好きになって、ココで愛し合ったんじゃないの。何度も何度も」 「…………ぁ……っ」 空いている手で、浴衣の合わせに手を滑り込ませ、貞操帯で覆われている秘部を強く押される。 ただでさえ、昂りが収まらないというのに、少しでも触られると、強い衝撃が走り、貞操帯に食い込み、敏感な部分にまた違った痛みを感じた。 しかし、葵人にとっては、直に触れられたのと同じぐらいの気持ち良さであるため、もっと触って欲しいと、身動き出来ないというのに、身じろぎをしてしまう。 けれども、兄がそのことに気づかないはずがない。葵人がそう動いたのと同時に、すぐさま指一本で、指先が触れるか触れまいかぐらいの触れ方をしてくる。 それがとてももどかしくて、指を求めるように限界まで身体を引っ張る。 そのことで、柱に縛られている両手までもが食い込んでしまうが、この際気にしていられない。 とにかく、その手でこの熱を冷まして欲しくて。 と、そこで、手を遠ざけられてしまった。 「どうしたの。そんなに残念そうな顔をして。そんなにもソコを触れて欲しいわけ?」 食い気味に頭を縦に振る。 「ふーん……? 僕以外の人に、いともたやすく股を開く人のことなんて全く信用出来ないけど、でもまあ、流石に限界ってことだよね。五年も射 ()精せてないのだから」 少しずつ視界が晴れていく中で見えた、兄のにっこりとした顔で、葵人の頬を指で撫でながら言ったことに、頭を殴られたかのような衝撃を食らわされる。 五年もこのようなことをされていたなんて。 にわかに信じ難いが、この兄なら平気でしてしまうし、それに、それほど自分の行なった罪が深いということが充分に分かった。 だが、こうなった原因が今となったら、何も分からない。 自分が一体、何を。

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