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再びの夫婦─檻─ 3

「本当は、五年じゃ足りないぐらい僕の怒りは収まってないんだよ。でも、当初の計画よりだいぶ遅れてしまったのだから、そうも言ってられないし、五年ぐらい射()せていなくても、ほぼ女性の身体である葵には必要のないことでしょ?」 「………っ」 撫でていた指が爪を立て、頬に痛みが走った。 兄が怒っていることなど十分に分かっているから、よりこの痛みは、甘い痺れ、というよりも、恐怖に支配される。しかし、後孔に挿 ()入れられているバイブのせいで、全てが恐怖に覚えているわけでもなく、快感と恐怖がごちゃまぜになっていく。 本当に自分はどうしようもない。 わけも分からず、涙が溢れていく。 「僕のことがそんなにも怖い? でも、そうさせたのは葵のせいだからね。……こんな気持ちで抱きたくもないけど、今までの罪、その身体で償ってもらおうか」 踵を返した兄が、「着替えさせておいて」と淡々とした口調で言ったのと同時に、代わりにやってきた使用人の数人が、一斉に葵人の縄を解いていった。視界がようやく見えてきたのもあり、今自身が見えている身の周りを見ようとしたが、次に着ていた浴衣を問答無用で脱がそうとする使用人らに阻まれてしまった。 しかし、それでもあの時とは違って、完全に逃げられないことを一目だけで理解するには、充分に思い知らされることとなった。 ううん。最初から僕には、逃げる所なんてないんだ。 それにだって、あの大好きであった兄から逃げてどうするの。 逃げる理由なんてないのに、愚かなことをしてしまった。 兄さん、本当にごめんなさい。 涙が一筋、流れた。 「葵様、化粧を施してますから、泣くのは控えて下さいませ」 「……ぁ、……は、い……」 ごめんなさい、と口にしようとするが、さっきと同じく、長年声を出していなかったかのように上手く声にならなかった上に、唇に紅を差すものだから、口を閉ざさずにはいられなかった。 それにしても、化粧をしてまでこれから何をされるのだろう。 いや、前に一度そうした時があった。 だとしたら、これは。 その時、下腹部にチクリとした痛みを感じた。 ああ、これもあの時と同じ。 そして、あの時とは違って、この痛みは何なのかは十分に分かってしまう。 また、自分が自分ではなくなってしまう。 「葵様、化粧が終わりました。次はお召し物を付けていくので、その場にお立ち下さい」

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