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再びの夫婦─檻─ 4

使用人の一人にそう促され、従おうとその場に立とうとした。が、今までずっと正座でいたせいなのか、足に力が入らなく、その場に崩れ落ちてしまう。 「……やはり、私達で支えて着替えさせるしかないようですね」 「……ご、め……な……」 「いいえ。それも碧人様から下された命令のうちですから、命令通りにするまでです」 そう返した使用人の一人が、他の使用人に指示を仰ぐと、後ろから「失礼します」と断りを入れて、両脇下に片手ずつ差し込まれ、無理やり立たされる。 こんな立つことすらままならないなんて、幼児以下だ。目の前に置かれた姿見に映る自身の姿があまりにも惨めで情けなく感じ、また涙ぐみそうになって、唇を噛み締め、目を逸らすかのように下を向いた。 その時、男にしては膨らんだ両胸が目に映ったのだが、その両乳首にピアスらしい物が付けられていることに気づいた。 何故、ここにこのような物が。あまりにも続く快楽で気づかないうちに気を失っている間に、兄が取り付けたのだろうか。 いや、違う。何かが違う。 これは、兄ではない誰かに付けられた……はず。 自分が無理やりされるのが好きだからと、急に付けられて痛い思いもしたけど、秘部が反応してしまうぐらいに、気持ち良さも覚えて。けれども、取り付けた本人は、後悔をも感じていて。そんなところが好きだなとも思っていて。 ここまで思い出しているのに、どうして相手の顔すら忘れてしまったの! 記憶を覆い隠すように、白い着物が胸ごと覆ったのを見て、一筋、また一筋と雫が頬に伝っていく。 「葵様、先ほども言いましたが、泣くとお化粧が崩れてしまいますのでお止め下さい」 「……ごっ、めん、なさ、……」 少々強めに言われたのもあり、怖く感じ、ぽろぽろと涙が溢れてしまう。 思い出そうとした人もことある事に怒るような人だった。生まれてから今まで、記憶にないほど怒られたことがなかったものだから、慣れなくて、怖く思ったことがあった。 そういったことも思い出せるのに、どうして、名前すらも思い出せないの。 筋肉の強ばりなのか、思うように動かせない腕のせいで、涙を拭うことも出来ず、頬を濡らしている葵のそばで、使用人らが「その言い方はマズイんじゃないのか」「碧人様に聞かれたら、何をされるか……」と畏怖にも似た声音で小声で会話をしていた。──その時。

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