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改淫な贈り物 18
息が乱れ、意識が朦朧とする葵人のことを知ってか知らずか、一旦動きを止めた碧人は、目の前に置いていたお膳から箸を取り、料理に手を付けると、「ほら、あーん」と口元に箸を持ってきた。
これを拒んだら、怒られる。
ピクピクと身体が痙攣しながらも、震える口を開け、口に入れると恐る恐るといったように、咀嚼する。
「どう? 美味しい……?」
「んっ、おいし……っ、ふっ」
「それは良かった。遠慮せず、どんどん食べてね」
「うっ、ふっ、ん……っ」
聞きながら緩やかに腰を動かしてくるものだから、不意な責めに上手く言葉にならなかった。
それでも、碧人は咎めることもなく、むしろ機嫌良さげに、葵人が声を漏らしながらも、ようやく飲み込んだタイミングで、次のを口に持ってきた。
と、思いきや、ギリギリ口が届かない距離にやられる。
顔をそちらに寄せてはみるが、繋がれた三点が同時にせめぎ合うが如く、強い痛みが来、嬌声が漏れそうになった。
「葵。早く食べないと冷めちゃうよ?」
最近、聞き慣れてきた柔らかい声音に、違った意味で背筋がぞくぞくする。
言うことを聞いてなかった頃の碧人の声音は、聞くに耐えられない身を震わせる程の恐怖を覚えていた。けど、今の声音は、昔から聞いていた自分によく向けられていた声音であったから、腹の底が疼いてしまうぐらいに身体が悦んでいる。
碧人の前でお仕置きとして見せることとなった自慰の時に開いてしまった、新たな快楽。
言うことを聞いていれば、この悦にも浸れる。
「どうしたの、葵。一口食べただけで、もうお腹がいっぱい?」
思っていたよりも深く意識を遠くに追いやっていたらしい、碧人の声でこちらへと戻り、それに答えるため、再び一口分に箸でやってくれたものを取ろうと、背筋を出来る限り伸ばす。
まるで、親が取ってきてくれた餌を、雛鳥が一生懸命首を伸ばしているようだと、唯一自由である足を伸ばして、口に運ぼうとした。
その時、足を何かに引っかけたらしい、盛大な音が聞こえ、思わずそちらを見やった。
そばに置かれていたお膳をひっくり返してしまったようだ、畳の上に料理が零れていた。
ああ、これは……。
「葵。ひっくり返してしまったね」
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