73 / 122

懐妊 8

それからしばらくの間は、酷い症状に見舞われていたものの、段々と落ち着いていき、今は熱や吐き気が治まり、食べることに恐れることはなくなり、けれども、ことあるごとに碧人に当たってしまうところは変わらずで、そのことに自分を責め、その八つ当たりで自身の腹を痛めつけようとして、碧人に縛りつけられ、それで悦ぶという毎日を送っていた。 「目立ってきたね」 縛りつけられ、悦に浸っていた時、ひと息吐いた碧人がそう言いながら、腹部を優しく触る。 そっちよりもこっちを構って欲しいのに。 密かに頬を膨らませながら、今日も碧人のことを誘ってみようと、甘えた声を上げようとした時、腹部を蹴られた。 正確に言うと、腹の中からだ。 「あ、今、反応したね。活発な子達だ」 嬉しそうに笑って、撫でていると、また蹴ってくる。 動いている。いやだ。 「大人しい僕達とは違って、活発な子達が産まれてくるのかな。そうだとしたら面白いよね。どうしてそんな性格になるんだろう」 「……もしかしたら、僕達の子達じゃないんじゃない?」 ぴくり、と碧人の手が反応する。 「葵。何を言っているの?」 「だって、碧人さん、前に言ってたじゃない。五年もの罰を与えるきっかけが、碧人さん以外の人と愛してしまったからだって。その愛した人の種なんじゃないの?」 「その時の種が、今さらになって、子を作るきっかけにはならないと思うけど」 「だったら、どうしてこんなにも活発に動くのっ!動く度に存在を知らしめているようで、おぞましくて仕方ないの! もう、こんなにも大きいのだから、出してもいいよね! 早く出させて!」 「葵、落ち着いて。双子だから、特に大きくお腹が出るんだよ。それに臨月ではないのだから、まだだよ」

ともだちにシェアしよう!