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懐妊 9

「だったら、その臨月っていつなの! 確認するものもないここじゃ、もういつなのか分からないの! ここにずっといたら、おかしくなりそうだよ……」 首に連結し、縛られた両手で顔を覆い、嗚咽を漏らす。 腹が大きくなり始めてから、ここにいることを主張する、愛したくもない子達が何かと反応し出した時から、碧人が、自分よりその子達に構うことが多くなった。 それに対して嫉妬し、さらに機嫌を損ねることとなり、碧人に支離滅裂な言葉を吐いて、どうにか気を引こうとしたものの、未だに腹部を殴ろうとするのを止めるための縛りつけをするだけで、それ以上構ってくれようとしない。 「……一番に、愛して……あげる……って、言った、……こと、あれは、嘘、なの……?」 「嘘なんかじゃ──」 「じゃあ、愛してよ……! 僕だけを一番に愛してよッ! いつも誘ってるのに、なんで、それに……応えて、くれっ、ないの……っ」 涙が次から次へと出てくる。 毎日のように、碧人のことを八つ当たりしては感情的になるものだから、泣いてしまい、そのせいで、目元が腫れてしまってる。 けれども、悲しくて仕方なくて、嫌でも涙が出てくる。 いやだ。本当にいやだ。 ぽんっと、二人分らしい足が蹴ってくるのを感じ、さらに自己嫌悪と激しく毛嫌った。 「……葵、話を聞いてくれる……?」 「聞きたくないッ!」 肩に置いてくる手を、身体を激しく揺すって退かしたが、今度は両肩をガっと掴まれた。 「聞かないと、お仕置きだから」 お仕置き。 その言葉に大きく反応した葵人は、そろりと、様子を窺うように手から顔を覗かせると、冷酷な顔をした碧人と目が合った。 ゾクッ。 あの顔だ。妊娠する以前によく見ていた、おぞましい表情。 あの頃は、底から震えるほど恐怖に見えたそれは、今は、何をしてくれるのだろうという、期待と悦びで溢れていた。 話を聞かないで喚いていようかと、けど、碧人の話が何なのか気になると葛藤していると、「話、聞く気になった?」と、普段と変わらない優しい笑みになり、口を開いた。 「僕が、葵のことを一番に愛してあげるって言ったのは、前みたいに僕の言うことを聞くのと、お腹の子達に愛情を注いでくれたらの話なんだよ。そうじゃないと、お腹の子達のように愛してあげることは出来ない」 「…………なんで」 「前にも言ったけど、妊娠した時点で、葵は母親に、僕は父親となるんだ。だから、葵は母親としての自覚を持って、共にこの子達に愛情を持って接してくれないと、葵を愛する意味がない」

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