よく晴れた空の下、満開に咲く桜が風に揺られ、儚くも見事な花びらを散らせていた。 自身の名にもあり、誕生月に咲かせる桜はどんな花よりも好きなもので。 だから、今もこうして初恋をしているかのように見惚れていた。 と、そんな時、自身のことを呼ぶ、重なった声が聞こえた。 そちらに目を向けると、顔がぼんやりと見えるぐらいの距離に、同じ背格好の男の子二人が仲良く手を繋いで、空いた手でこちらに手を振っていた。 きちんと歩けるようになって数年。子どもの成長は早いなと思いつつ、一生懸命に振る小さな手が、まだ愛情をいっぱい注ぎたいぐらい愛おしくて。 「はいはい、今から行きますよ、──、──」 着物の擦れる音と共に、下駄の音を響かせながら、愛しい子達の元へと歩いて行った。 なんて今日は、穏やかな日なのだろう───。