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懐妊 15
「───」
ふっと、目を開ける。
ゆらりと頭を上げると、穏やかな、しかし、どこか心配そうな表情を浮かべる碧人がそこにいた。
「あぁ……良かった。何度呼びかけても、なかなか起きないから心配になったよ」
「あ…………えと、ごめんなさい」
「ううん。謝ることじゃない。こんなにも大きくなったのだから、苦しくて、なかなか寝られないのでしょう?」
そう言って、葵人が手を添えていた箇所から違う箇所を撫でる手を、ぼんやりと見ていた。
碧人が言うように大きくなるにつれて、内蔵が圧迫され、そのせいで気持ち悪く感じ、なかなか寝つけず、こうして日中、腹部を撫でながら寝に入ってしまうことが多々あった。
そのまま寝てもいいのだが、座ったままであるし、それに碧人に形だけでも母親らしいことをしているのを、褒めてもらいたかったのだ。
あの時から結局、不安は拭えなくて、今のように毎日撫でてはみるのだが、手が震えてしまって仕方ない。
未だに胎動が怖く感じてしまっているのだ。
今は前ほど静かになっていることに、正直安堵をしてしまっているこんな自分が、果たして、本当に産めるのか。
「そろそろ臨月だからね。ようやくこの子達に会えると思うと、僕としては嬉しく思うけど、母親である葵もきっとそうだよね」
「う、うん。早く触れたくて仕方ないよ」
早く出してしまいたくて仕方ない、という言葉を飲み込んで、慌ててその言葉に言い換えて、わざとらしい笑みを碧人に見せつけた。
一見、穏やかそうに葵人の話を聞いているようだが、どこか見透かしているようにも見え、内心冷や汗が大量に出ていた。
「それにしても、前よりも胎動が感じられなくなってきたよね。まあ、だから膀胱が押される形になっているのだけど」
「うっ、ん…………」
撫でていた手を、下へと指先で沿うように下げていき、股の間から後ろに引っ張る形にされていた中心部を、ストッキング越しから触れられ、小さく悶える。
今まで取り付けられていた貞操帯では、なかなか来れずにいる碧人が排尿の手伝いが出来ず、そして、排尿する回数が増えたために、葵人一人でも出来るようにと、中心部に違う物が取り付けられた。
腰辺りに細いベルトを巻き、そこから、中心部に合ったサイズのストッキングに包み、それを股の間に入れ、臀部にある引っかける部分に取り付ければ、前から見れば中心部がないように見える、女性のように排尿が可能な器具の完成だ。
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