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懐妊 16
「それからココの──メスイキベルトは慣れてきた?」
「は、う、ん……っ。なんと、か……」
「そうだよね。そもそも葵は女の子なのだからすぐに慣れるよね」
意味深に笑いながら、指先で弄ぶように中心部を触ってくる碧人に、声を漏らすのを堪えつつも疑問に思った。
碧人はおかしなことを言う。自分は元から女性であったはずだ。男性的特徴もあるけれども、女性であった……はず。
そう思っていたのに、それも違う気がすると頭が混乱しかけている葵人に、ぽんっと頭を手が乗ったことで、意識を碧人に向ける。
「そういえば寝ている時、とても幸せそうな表情をしていたのだけど、何か素敵な夢を見ていたの?」
起こすのが惜しいぐらいにね、と言う碧人に、今となっては朧気になっている記憶を辿るように、ぽつりぽつりと話し出した。
「……眩しいぐらいに、晴れ渡った空の下で……、僕の好きな桜が満開に咲いていて……それを見上げていたら、不意に声を掛けられた、のだけど……今となっては、誰が声を掛けてきて、それに、名前を呼んだ気がするけど、全く憶えてなくて……けど、何だか穏やかで幸せな夢だったよ」
「そうか……」
何となく大きな腹を撫でていた葵人に、愛おしげに頭を撫でられたことにより、くすぐたそうに肩を竦めた。
「葵。そろそろこの子達に、名前を付けてあげようか」
「え、もう?」
「言うほど遅くはないよ。今から名前を決めて、呼んでやれば、もっと慈しみたくなると思うし」
そう言いながら共に腹部を撫でてくる碧人の手に、密かに眉を寄せながらも、ふと頭に小さな男の子二人が、顔がぼんやりとであったが、浮かんだ。
「……はると、みなと……はるき……」
「名前?」
「うん。急に顔がはっきりと分からない男の子二人が、頭に浮かんできて、そしたら、何となくの名前が浮かんできて……」
「今出した名前は、どう書くの……?」
差し出してきた碧人の手のひらに、指で書くと、「なるほど」と感嘆した。
「……陽斗、湊都、春希……どれもこれも素敵な名前だね」
「えへへ……。双子だから、似たような名前にしたいのだけど……」
「僕達……桜屋敷家代々そうしてきたみたいにね」
「そうだったの? 僕は碧人さんと同じ読みで嬉しいなと思ったのだけど」
「前にもそう言ってくれていたよね。今となれば、葵もどうして同じ読みなのか、分かると思うよ」
「んー…………?」
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