1 / 506

第1話

新生活を始めるにあたり俺、萩生 詩(はぎう うた)は母親の実家…椿家へ引っ越ししてきた。 これからは、ばあちゃんと二人暮らしだ。 地元の高校ではなく、都内の私立高校に進学しなさいという家の方針にとくに異論はない。 わくわくする気持ちでいっぱいだ。 真新しい制服をハンガーに掛ける。 まぁ…でも… 「…若干既にホームシックなのは…秘密だ」 空き部屋があるから好きに使いなさい。 そう言ってくれたばあちゃんには感謝だ。 ばあちゃんちは実家の萩生家の雰囲気と似ていて純和風な造りをしている。 しばらく来てなかったけど…どことなく懐かしくて落ち着く。 俺の部屋は二階にあって、フローリングタイプの洋間だ。 だけど家の中は畳の香りと仄かな線香の香りが漂っていた。 この匂いも落ち着くなー。 そんなこと考えてながら引っ越しの段ボールから荷物を出して整理する。 クローゼットにポイポイと無造作に服を押し込んでいく。 3月末なのにまだまだ寒い。 俺の部屋の窓からはお隣さんの二階の綺麗なベランダが見えた。 あ、 お隣さんにご挨拶しろって言われてるんだ。 実家から持たされた菓子折り。 ちょっとドキドキするな。 お隣さんには俺と同じ高校に通う先輩がいるらしい。 何年だっけ? でも… 引っ越しの荷物が届いて外に出たときにお隣さんに入っていく可愛い女子が見えた。 たぶんあの子だな。 四月から通う学校の制服着て… 長いふわふわした髪揺らしてたよ。 んーあれだ…ここから恋がはじまったり? あはは!んなことないんだけど! 馬鹿じゃね俺。 気を引き締めないとね。 はじめが肝心だから。 しっかりご挨拶!! 行ってきます!

ともだちにシェアしよう!