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第29話
「つ ま り…近所のよしみで宮ノ内先輩と仲良くなったってこと?」
「う、まあ…そう」
「近所のよしみであんなに
仲良くなれるのか し ら ?」
「さあ…どうだろう…」
放課後クラスの女子からの質問にたじたじの俺。
原因は…最近やらた声をかけてくるあの先輩のせい。
今日はすれ違いざまに抱き着かれて周囲を驚かせていた。
隠していたことも吐かずにはいられない状況になってしまった。
接点ないだろう先輩から声かけられたり抱き着かれたりされてるんだから。
説明しちゃんとしとかないとね。
「家同士つき合いもあってさー」
「ふーーーーん。萩生…隠し事はしないほうがいいよ」
「言いたいことは言っておしまいよ」
「私は応援してるよ!萩生くんっ!」
何を知りたいのかやたら女子たちが目をキラキラさせて聞いてくる。
男子にも聞かれるけど、女子の方が食いつきがいい。
応援ってなんだ?
その日の放課後。
「おーい詩、帰ろう!」
「うん」
玲二といつも通り帰る。
俺たちは三階からとぼとぼ昇降口まで移動する。
管弦楽の練習だろうか弦楽器の音色が遠くから響いてくる。
周囲はいろんな生徒の話し声で賑やかだ。
「質問攻めだったな」
「だったね…疲れたわ」
「まぁ、しばらくしたら落ち着くんじゃね?」
「だといいんだけどね」
今日は本当疲れた。
というか、宮ノ内先輩のせいでここ数日ドキドキしておかしい。
人気ある先輩が一年に抱きついて来たりしたら皆驚くし、俺も驚いてる!
これ続くのかなーやれやれだ。
俺達は、
一年生玄関に向かうのに二階から一階へ…
踊り場を下りるんだけど…
その途中…
ドン
あれ?
思いのほか自分の身体が前のめりになった。
バランスが崩れる…
んん?
なんかヤバ…
後ろから背中を押された感覚…
階段を踏み外した俺は
そのまま
一階まで転がり落ちていた。
「詩ー!!」
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