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第30話

「いってーーーーー!!!」 「…詩!…大丈夫か?!!」 先に階段を下りていた玲二も一緒に巻き込まれてしまった。 「玲二も大丈夫?ごめんっ!!」 「僕は全然大丈夫だよ。詩は?大丈夫?!」 落ちる瞬間ヤバいって思ったけど、持ち前の運動神経で大事なことにはならなかった。 あちこち落ちた衝撃で痛いけどでも、 「いた…」 落ちた時に左手首をひねってしまったみたいだ。 周囲にいた生徒が何事か集まる。 その中の一人が大丈夫?と気遣ってくれた。 保健室に先生は不在だけど保冷剤があるからとってきてくれるらしい。 「そうだね。冷やしたほうがいい」 「はぁ、参ったな…」 「詩…」 玲二は複雑そうな顔をしている。 うん、理由は何となくわかる。 階段を降りるときにすれ違った女子たち…あの子たちしかいない。 「…あとで話そう」 「うん」 しばらく待っていると…先ほどの子が保冷剤を持ってきてくれて、丁寧にハンカチで包んで手首に巻いてくれた。 ヒンヤリして気持ちがよかった。 ズキズキしてるから腫れて来るかな? 「あんまり痛むようならお医者さんに行ってね?」 「ありがとう、ハンカチごめんなさい」 「いいわよ」 「ちゃんと返しますんで」 「気にしないでね」 丁寧にお礼を言う。 この時ちゃんと彼女の顔を確認した。 あれ、この先輩…。 知ってる? 「じゃあね。お大事に」 微笑みながら去って行く。 あ、 ドキッとした。 彼女は… 緑川 露子だった。 「うわーまじで?あのハンカチ貸してくれた人が緑川先輩?」 「うん、間違いない…と思う」 「なんかさ…タイミングよく居たと思わね?」 「三年普通こっちの階段使わないだろ」 「…」 あれから痛みが増してきたので、近くの形成外科に行った。 レントゲン撮られたけどひねっただけで骨に問題はなく、湿布と痛み止めを処方してもらった。 今は自分の部屋のベッドに転がりながらスマホで玲二と喋ってる。 「最近詩と宮ノ内先輩仲いいから…嫉妬してるんじゃない?あの人なんかプライド高そうじゃん? すんごい美人だけど」 「…確かに面白く思ってない女子はいるだろうなー」 「たとえ相手が男でも気に食わないんだろうね」 「そうなのかな?」 「だって相手は宮ノ内先輩だぜ?」 「はい…」 特にどういう関係でもないんだけどなぁ…。 確かに仲は以前より良くなったと思う。 一緒にいて楽しいというか落ち着くというか…。 玲二が言うには先輩の態度は他の生徒と俺に対してとは全然違うらしい。 そうなのか? お隣りさんがある窓を見つめる… 緑川先輩が絡んでるって証拠はないし。 … ハンカチ洗ってきちんと返さないと。 はぁ… 溜息がこぼれる。

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