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第40話

ある日の放課後。 「萩生君、一緒に帰りましょ」 「あ」 下校時間、 一年生用の玄関を出たところで声をかけられた。 緑川露子先輩だった。 周囲とは違う雰囲気を醸していて、綺麗な人だなーって改めて思った。 やっぱり長い黒髪が綺麗だ。 「お茶 するって約束忘れてないよね?」 にこっと笑うと一層可愛さが増す。 わー忘れてました!なんて言えないっ! 「あ!はい!勿論覚えてます!」 「今から予定なければ…駅前行かない?」 「…」 「ね?」 「…うん、いいですよ」 約束してたもんなー仕方ないか。 「やったぁ!」 緑川先輩は嬉しそうにはしゃぐ。笑顔可愛い。 「玲二悪いけど、一緒に帰れないや」 「え!…あ詩…大丈夫か?」 先輩に聞こえない声でぼそっと聞かれた。 「うん、大丈夫だよ。心配するなって」 「そか、…わかった」 「うん、じゃまた明日!」 「おう」 緑川先輩に腕をぎゅっとつかまれる。 「え、…先輩ちょっとくっつかないで!」 「えー!いいでしょ!早く行こうっ」 周囲からやたら注目を浴びてた気がする。 この先輩も色々目立つ先輩だものなー。 なんで俺みたいな一年生相手にするんだろう…。 そんなこと思いながら二人で駅前へ向かった。 緑川先輩と駅前のおススメだと言うカフェに入った。 可愛らしいスイーツが沢山あってカフェだけど紅茶も美味しいらしく女子に人気なんだって。 先輩は色々悩んでベリー系のタルトを俺はショコラ系のケーキを頼んだ。 甘いの全然平気だし、こういう雰囲気のお店嫌いじゃない。 壁は漆喰で塗られテーブルや椅子は木目調の素材を使っていて、置いてある雑貨もシンプルでとってもオシャレだ。 ケーキ半分こして食べようって言ったらすごい困ってた。 先輩に俺のケーキあげようと思ったんだけど、ほら女子ってカロリー気にするじゃん? それなら半分こして食べたらいいかなーって思ったんだけどな…。 それって女子同士でやるのが普通だったかな? まずったかな…でもまぁ結局半分こしたんだけどね。 どっちのスイーツも美味しかったよ。 玲二は色々心配してたけど緑川先輩はそんなに怖い感じでもないし、何か俺に危害を加えてくるとかそういう感じでもなかった。 ただやたらスキンシップしてきて…胸とか押し付けられたりとかされたんだけど、これってさー普通なのかな? やめてくださいとは言ったけど… あんまり女の子がそういうことするのって良くないと思うんだけど… 後輩の俺からは注意するとか…そういうこと言えない。 「最近…宮ノ内君と何かあったの?」 「え」 先輩はアイスティーのストローをくるくるかき混ぜながら呟いた。 「ほらー前は結構仲良くしてたんでしょ?抱き着かれたりとかされて」 「あー…そうですね。今はそういうのないです…」 「ふーん…萩生君いい子なのに…宮ノ内酷いよねーなんか可哀そう」 「いや…そんなことないです。宮ノ内先輩は酷いとか…そんなことないです」 「私なら萩生君にそんな冷たいことしないのに…」 「え?」 先輩の細い指先がちょこんとが俺の手に触れてきた。 「萩生君…またデートしようね?」 「えええ!?あ!これデート?…ですか!」 「やだー!なんだと思ってたの!萩生君面白いねっ!」 先輩は楽しそうに明るく笑っていた。 やっぱり笑顔が可愛いなと思った。 それから… 緑川先輩は何かと俺のクラスに来るようになったんだけど…なんで? 玲二と一緒にいれる時間も減っていった。

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