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第130話 通りすがりのもぶくん。おわり
ゆっぺ
「「宮ノ内せんぱーい、さよーならー」」
俺となっちが宮ノ内先輩に声をかけると、
「ん、じゃあな」
ほんの少し微笑んでくれた。
カッコいい!カッコいい!
わぁ、俺こんな先輩になりたい。
先輩は手洗いから戻って来た萩生に鞄を渡す。
「ありがと…ん…キリ先輩どしたの?」
「ねー詩、俺ってさ、そんなにしつこい?」
「??え」
目をぱちくりしている萩生に向け優しい笑顔をする宮ノ内先輩。
しかし何かを察したのか急に萩生の顔が強ばり始めた。で、何か俺をチラ見してる?
あ、そうだった。
さっきの日焼け止めの話、宮ノ内先輩も聞いてたんだ。
事故だよ事故。
悪気はないぞ~!
とりあえず、すまーん!のジェスチャーを萩生に送る。
「な、なんのことか俺にはさっぱり」
「さっぱり心辺りない?マジでないの?日焼け止めのこととさ」
「!!あーとキリ先輩。これには色々と訳がありまして。一言では言えない、壮大な物語が……」
「そお、じゃ帰ってからゆっくり、その訳聞くから」
優しげな先輩の笑顔から、萩生との仲の良さが伺えた。
冷たそうに見えても、きっと萩生には優しいんだろうなーいいなぁ。
萩生が羨ましい。
「え…え…え…」
そんな先輩とは裏腹に、不思議と萩生の顔は冴えない。
宮ノ内先輩、全然怒ってないと思うけどな。どうしたんだろう。
慌てる萩生は、宮ノ内先輩に引きずられるように帰って行ってしまった。
この後、スイッチの入ったしつこーい霧緒に詩がひいひい言わされることになるなんて俺らは知らず。
「なっちー、俺も先輩たちみたいになりたい。あんなカッコいい先輩憧れるー。腐った妄想置いといて、マジ憧れるわ」
「カッコいいよなー先輩。俺もいい男になってゆっぺに振り向いて貰えるように頑張るんだ」
「なんだよそれ。俺ら仲いいよな?」
「仲良いねって痛いから腕離せよ。ずっと捕まれてて、うわ跡ついてんじゃん!」
「あーすまん。先輩たちと話したら緊張しちゃってあはは」
「まぁ……嬉しいからいいけど。帰るぞゆっぺ」
「うん!」
でもやっぱり俺はホモが好きだから今日明日も腐った妄想はやめられないのだった。
そして、なっちの気持ちに俺が気づくのはおよそ一年後。
それはまた別のお話。
**
通りすがりのもぶくんおしまい。
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